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人の心の変化

Yomi Dr.でもお馴染み読売新聞は、医療関係の記事に熱心だという印象を持っている。私が心臓手術を受ける病院選びの参考にした病院毎の実績症例数の生々しい記事を載せていたのも読売新聞だ。

でも今、我が家では東京新聞を愛読している。原発反対や昨今の政治に対する連日の報道の方針は、他の新聞各紙とはちょっと異なっている。南淵先生のエッセーもたまに載る。無駄な織り込み広告も少なく、購読料も安いので好きな新聞だ。

2012年7月17日付けの東京新聞朝刊に、池田省三さんの「がんと生きる ステージ4」というエッセーが載っていた。「告知後の謎」という、興味を引く内容だったので少し紹介したい。

人は誰しも年を重ねると日々の時の流れが速く感じるようになる。小学生の頃の一日と、43歳の今の私の一日では、その時間の長さの感じ方が全然違う気がする。長く生きれば生きるほど、人の一生に占める対象の時間が相対的に短くなるから、そう感じるのだと言われている。

ところが、池田省三さんは、末期の大腸がんの告知受けて余命が限られていると自らが悟った瞬間から、時間が緩やかに流れ始めたそうだ。また、気分がゆったりとして、怒りや悲しみをあまり感じなくなったとのこと。世の中で自分のことを批判する人がいても気にならず腹が立たない。モノが欲しいという気持ちもなくなったそうだ。人は誰にも、見るとつい衝動買いしてしまうような、そして、購買欲が満たされるとそのモノに対する意識が薄れいずれ後悔してしまうようなものがあると思う。私の場合は、カメラの機材関係だろうか・・・(最近はうまく自己管理しています、笑)。だが、余命僅かと悟ると、そういった購買欲も無くなってしまったそうだ。そして、そうした変化は決して心持ち悪いものではなく、むしろ、心豊かになるような、喜ばしい変化だったそうだ。

ところが、抗がん剤の効果で病状が安定し、「まだ、死なないな」と思ったら、時の流れが再び元の早さに戻り始め、気持ちの持ち方や購買欲についても同じく以前同様の状態に戻ってしまったとのこと。

心臓病を告知されても、直ぐに、自分の余命を考える人は少ないと思う。多くの心臓病は、適切な治療を適切な時期に行えば、健常者同様の体に戻すことができるからだ。最も、心臓手術のリスクは、その他の一般外科手術に比べるとはるかに高い。最悪の場合、手術で命を落とす可能性もある。そう認識した時に、果たして、その患者は時の流れをどう感じるのだろうか?気持ちの持ち方も変わるのだろうか?物質に満たされたい、モノを所有したいという欲望は変化するのだろうか?視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚に変化は発生するのだろうか?

私の例でいうと、心臓病であることを知ってから心臓手術を受けるまでは、それまでの気持ちや行動となんら変化は無かったと思う。術前に自分の余命を認識することがなかったので当然かもしれない。でも、心臓手術を受けた後は、何かしらの変化があったのは確かだ。怖いものが無くなったというか、大胆になったというか、本能の赴くままに生きることができるようになったというか・・・うまく表現はできないが心臓手術後の精神面での変化は確実にあった。術後3年半を過ぎて、その気持ちが術前の状態に戻りつつある気もしているが、100%戻ってしまった訳ではない。時と共に手術創は薄れてきれいになっても、心臓手術を受けたという経験は時では消せない創として自分の体に刻みこまれているからだ。

(元)心臓病仲間の皆さんはどうですか?

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Secret

No title

私は心臓病であることを知ってから ずいぶん考えが変わりました
またカムバックさんを一番最初に知り それからたくさんの方と交流するようになり変化もたくさんあります

それまでは甘いものばかし考えずに食べてたけど 最近は食事以外に食べたくなくなり間食しません

おかげで体重も減り変形股関節症の痛みもなくなりロキソニン服用をしなくてよくなりました

体調はすごくよくなりました
これからも この体重は維持していきたいです

手術後は 成功さえすればもっと元気になれそうな気がします
パソコン大好きでカメラも大好きでカラオケも趣味は多いです

手術後は もっともっと飛び跳ねて充実した一日を過ごしていきたいです
今は1年があっ!というまに過ぎて行きます
だから ぼーーっとして過ごしたくはないですねー

でわ手術へ向かい明日入院します
ありがとうございました 感謝してます

頑張ってください!

kiyoさん、いよいよ明日入院ですね!
kiyoさんのブログには沢山の仲間が集まってきて、声をかけてくれていますので
全く心配なしですね。
入院中のリアルタイム報告お待ちしています。
手術の成功と早めのご回復をお祈りしております。

No title

 頑張ります!
必ず 元気になって ブログ続けます

医療ソーシャルワーカーについて

医療ソーシャルワーカー(MSW)って職種があるのをご存じでしょうか。
呼称は少々異なったりしますが、病院にはたいがいそのような職種の方がいます。

入院前から相談出来たり、入院中からであったりなど病院によって相談形態は様々なのですが、少しでも今後の生活などで不安なことがあったら問い合わせをしてみてください。

Dr.やナースとは違った視点での、今後の生活などで患者さまに寄り添ったお話が出来るのではないかと思います。

いつもブログを読ませていただいている者からコメントさせていただきました。

ぽつぽつ参加させてください。

ソーシャルワーカー

半分の月さん、コメントありがとうございます。

私が手術の為に入院した際もソーシャルワーカーの方がいらっしゃって、
入院後すぐに名刺を持ってベッドまでやって来てくれました。、医療費の
支払いの方法などをお話して頂いた記憶があります。

医者や看護師とは違った視線で患者に接してもらえるということは
知っておくと役に立つかもしれませんね。

No title

カムバックハートさま、こんにちは!
yukoです。

私は術後、とっても謙虚になった...と自分では思っています!
(家族にはつっこまれるかもしれませんがw)
それまで病気になる前は、なんだかんだいって、自分ひとりの力で
生きてるような気になっていましたが、手術を経験して、周囲の人に
支えてもらって生かされてるんだなぁ...ということを実感したから
でしょうね。

あとはやっぱり、私の場合は死というものを間近に感じたことで、
残りの人生、悔いなくやりたいことをやってこう!と思うようになり、
いろんなことに積極的に参加するようになりました。
以前の私だと、オフ会参加なんて考えられませんでしたから。

病気にならない方がそりゃ良いですが、今となっては、
なったらなったで得たものもあるよなぁと感じています。
もちろん、(元)心臓病仲間の皆様とのご縁もその一つですね(^^

最後に...遅くなりましたが10万ヒットおめでとうございます!
これからも更新を楽しみにしています。
そしてkiyoさんからの元気なコメントが拝見できる日を楽しみにしております!

手術後の心の変化

カムバックハートさん こんにちは。

池田省三さんのお話を読んで
人間は覚悟が決まると 穏やかで 心豊かな心境になれるのかなと想像しました。

私の場合 心臓手術は、 肉体的には 自分が想像していたよりは わりとあっさりと通過できた
ように感じています。 しかし 精神的には、心臓手術後の心境は 今まで経験したことのないもので、
弁膜症発覚のきっかけとなった卵巣摘出手術 (心臓手術の前年) 後と比べても
全く 質も次元も違う別格のものでした。

特に職場復帰後は、誰でもが経験できるわけではない「特別な体験」を乗り越えた自分を
誇りたくなるような 高揚感が 一気に湧き上がってきました。
でも それは 身近なまわりの人に話しても感覚として 決してわかってもらえなかったと思います。

この高揚感はどこから来るのか と思い巡らせていて 気が付きました!!

それは、手術という人工的な処置とはいえ 「一度停止した心臓が再び鼓動を始めた」 という
あまりにも神秘的で感動的な事実に 自分の心が 圧倒されているからだと。

心臓手術が 「特別な体験」 「次元の違う別格の体験」だと感じるのは この一点に
尽きると思います。 この感覚は 術前にはわかりませんでした (あたりまえですね)

心臓の再鼓動を身をもって経験した手術後は、
「人生で そのこと以上に大きなことはない!」と思えて
小さなことにとらわれなくなったり、
今までだと怒ったり 悩んだりしていたことも 「たいしたことではないなあ 」と 前向きに思えたり。
カムバックさんの言葉の 「怖いものがなくなった」 という感じも わかります。

術後まもなく10カ月、本当に早い「時」の経過によって 最近は やや雑念にとらわれたりする
こともありますが

それでも 心臓手術後の精神的な変化は 術前には想像もしなかったほど
大きなものがあります。


No title

私が大動脈弁狭窄症と健康診断で分かった時、このまま何もせずにいたら余命5年と伝えらても、「すぐではないんだ~」と、のん気な者でした。

その後、横浜の病院で時期がきたら手術と伝えられて、「時期が来たら手術か~~」と、自覚症状がないものですから、のんきなものです。

その前に先天性白内障で、車の免許が取れないほどの弱視でした。
目で大変な日常でしたが57歳の時白内障の手術、世界が変わりハッピーでした。

心臓病がわかった時、眼科の先生に「眼も先天的だから、ほかに何かあっても不思議はない」と聞かされたとき、「妙に、納得」し、受け入れることが出来ました。

また、南淵先生の初めての診察時「親を恨んではいけない」とも~~

65歳で手術、心臓も二せん弁の大動脈弁に牛の生体弁が入り、ペースメーカーも植え込み、心臓も、正確に動いています。眼には眼内レンズが入り、パッチリ見えます。

病気の重い人も、軽い人も、大変さは同じです。
v-344気持ちの持ち方、ここで出会えた皆様のように、人との出会いで、どれだけ心が救われてきたことでしょう。v-132また、オフ会に誘って下さいね。

心の変化

術前・術後、心の変化はあります。

心臓手術を経験して、生還したということで生きる自信を得たこと、いっとき心臓を止めて死に近い状態であったということからなのか死を遠い世界と思わなくなったこと。。。
生きている間は、自分に課せられたことを全うしたいという思いがあり、様々なことに貪欲になっていること。。。

以前にカムバックハートさんもブログに書かれていましたが、今となっては心臓病となったことを不幸とは思えないのです。
心臓病は私に、試練と、乗り越える力と、乗り越えた自信と、その後の心の余裕と、大きなものに守られているという暖かさを与えてくれました。

今日も文句も言わずに10万回動いてくれている健気な心臓に感謝です。



プロフィール

Author: カムバックハート

カムバックハートブログバナー

カムバックハートこと、鍋島と申します。神奈川県川崎市在住の55歳男性。

2008年12月に40歳で心臓の僧帽弁形成手術を受けて、第二の人生をスタートさせることができました。

南淵先生と私

南淵先生と私(術後の初外来にて)


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お知らせ
このブログは、私が心臓弁膜症の僧帽弁閉鎖不全症という病気に診断されたところから、入院、手術、退院、その後の生活という流れで時系列に記載しています。手術を受けた時の描写は2008年12月の状況ですので、その後の医学の進歩で内容的に古くなっている部分があるかもしれません。実際の患者にしか分からない心理的な面の記述をできるだけ表現したつもりです。最初から読まれる場合は、「★はじまり ~こちらからご覧下さい~

(元)心臓病仲間のアンケートを企画・回答集計しました(2018年秋)。これから心臓手術を受ける方にはとても参考になるデータだと思います。アンケート集計結果はこちらの記事へ

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南淵明宏先生の公式サイトにある「勇患列伝」 その7に出てくる「平松」とは私のことです。

yomiDr.のサイトにある世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ にこのブログのことを書いて頂きました。こちらの記事には第三回(元)心臓病仲間の集まりについて書いて頂きました。
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