平成29年度 考心会 総会&講演会

本日は、考心会。TTおじさん、Oさん、黒鉄さん参加。(深津さんのコメント:「今日は女性陣の出席が少ないねぇ~」)

南淵先生の講演:
■患者の不安の話。患者が必要もない薬を処方してもらって結果的に安心感を得ている状況が、無駄な医療費を増大させている。医者が患者への説明責任を避けて、薬を出しておけば黙って安心するからという医者側の心理も課題だとBSのテレビ番組で言いたかったそうだが時間切れで発言しきれなかったとか。
■7月に新横浜駅隣接の新横浜ハートクリニックがオープン予定。そこで、毎週日曜日に南淵先生が新たに外来検査・診察を始める予定とのこと。現在の昭和大学、稲波脊椎関節病院、南町田病院での外来では増え続ける術後患者のフォローがパンクしてきているそうだ。日曜に新たに外来診察の時間を作ることで引き続き術後患者のフォローもこなされていくとのこと。循環器内科の宮山友明先生が院長で、内科と外科が密接に連携したクリニックになるそうです。また、心臓リハビリの徳田先生もそこを拠点に活動されるようです。
■心臓手術はタイミングと気運が大事というお話。
■南淵先生自身の健康のお話。
■深津さんの近況報告。

大和成和病院の関宏先生の講演:
■7年間お仕事されたドイツの心臓病センターでのご経験を交えて、日本とドイツの心臓手術の違いを説明された。
■日本は約1億3千万の人口に対して年間の心臓手術件数が約55,000件、心臓手術を行える施設の数が540。ドイツは、約8千万の人口に対して年間10万件の心臓手術、施設の数は78しかない。施設当たりの手術件数を計算してみれば分かるが、ドイツは集約的に患者を扱うが故に仕事は分業的。エビデンスに基づいた判断で治療が行われる。関先生の所属されていた病院は年間3,500件の心臓手術を実施。外科要員は90人とのこと。
■ドイツ人の医者が不足。心臓外科医の世界も、世界中からやってきた外国人医師達。
■人工心肺を使わないオフポンプのバイパス手術は、日本ではバイパス手術の約6割であるのに対して、ドイツは10~15%。オフポンプの比率は日本が圧倒的に高い。バイパス手術での死亡率は日本が1%台なのに対して、ドイツは2.8~2.9%.。
■ドイツの大動脈弁置換術では、かつて機械弁と生体弁が半々くらいの比率で使われていたが、ここ数年は生体弁が植え込まれることがほとんど(9割9分以上?)とのこと。その理由には、生体弁の質が良くなり耐久性が増してきたことと、TAVIと呼ばれる経カテーテル手術の件数が増加しているため。
■胸骨の切開の仕方も、従来の正中切開以外に、MICS(低侵襲・小切開の心臓手術)や胸骨の部分切開(L字型、T字型など)など創を小さくする手術が増えてきている。しかし、肋骨に力を入れて隙間を作って手術すると、長く大きく切る正中切開よりも術後の痛みは大きいとか。
■劣化して古くなった生体弁の中に、新しい生体弁をTAVIの手法で植えつける手法の開発も医療メーカーで進められている。
■TAVIにより、これまでの心臓手術のやり方ではでリスクが高すぎる患者に対して心臓手術を実施できるようになった。しかし、長期成績は今後判断される。(どんな患者でもTAVIで心臓手術すればよいというものではない)
■僧帽弁の手術もMICS(低侵襲・小切開の心臓手術)がドイツでは多くなってきた。その理由に一つに、ドイツ人の身体は体格が良く大きいため、通常の正中切開よりも脇腹の上あたりからアクセスするMICSの方がかえって術野が良好なことがあるとのこと。
■閉鎖不全となった僧帽弁を、クリップを用いて前尖と後尖がうまくしまるようにする器具も開発されているそうだ。
■心臓移植は、現在、年間300件程(件数は減ってきている)。待機者より移植を受けることができる患者の数の方が圧倒的に少ない。しかも、移植後の成績が必ずしも良いわけではないらしい。よって、補助心臓の開発が急速に進められていて、この10年の間にも機器の携帯化による患者のQOLの向上は飛躍的に進んだようだ。

創立21年目の考心会。これまでは、「心臓手術後の生活を考える会」でしたが、今後は、「心臓病患者の生活を考える会」と会の名称を変更し、術後患者以外にも心臓病に関わる方全般に対象を拡大するとのこと。もちろん、これまで通り、参加資格に、手術を受けた病院や執刀医は関係ありません。年二回の講演会と、その内容を書き起こした冊子の配布等があって年会費4千円です。興味のある方は是非考心会にお問い合わせ頂ければと思います。このブログ仲間の参加がもっと増えれば、講演会後に軽く集まりもできるかと思います。

考心会ホームページ http://www.koushinkai.net/
考心会連絡先メールアドレス:exam@koushinkai.net

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考心会 創立20周年記念講演会・演奏会

考心会は創立20周年になるとのこと。私が手術を受けたのは約8年前だが、実は考心会に参加しはじめたのはそれから2年ほど経ってから。(今となっては術後直ぐに参加すればよかったと思っている。) その後約6年間、ほぼ毎回参加を続けている。



考心会設立20周年を記念して発行された「心臓病との闘い3 よりよく生きるための患者力」が出版された。
第一章 私の患者力(患者9名)
第二章 私の養生訓(患者5名)
第三章 心臓病は私の人生を変えた(患者12名)
第四章 特別寄稿(南淵先生、山中先生、藤崎先生、畝先生、米田先生、徳田先生、深津さん)

私も第三章に「心臓手術が私に与えてくれた人生の変化の数々」と題して、8頁程の拙文を書かせて頂いた。このブログや集まりのことなど、いつもの内容だが、こうして印刷物になってできあがってくるとちょっと嬉しいものです。表紙の裏に、記念に南淵先生のサインを診断書以外では初めて書いて頂いた。
書籍を購入ご希望の方は考心会までお問い合わせ下さい。
 考心会ホームページ http://www.koushinkai.net/
 考心会連絡先メールアドレス:exam@koushinkai.net

盛り沢山な内容のため講演開始がいつもより30分早い。まずは、山本会長のお話からスタート。

そして、いつもなら南淵先生だが順番を入れ替えて大和成和病院長の倉田先生のお話。倉田先生は、33歳の時から現在53歳までの20年間、大和成和病院で心臓外科医を続けておられる。最近の大和成和病院の活動の状況や、今後の体制拡充に向けての準備状況などを語られていた。現在、大和成和病院にはカテーテル室は2室、手術室は3室あり、24時間救急対応できるように設備を整備されている。それに対応する医者や看護師の教育や体制作りも着々と勧められているとのこと。より患者に寄り添っていくという方針の元、例えば、患者の希望することに自分の病院で対応できなくても、どこに行けば必要とする情報を得られるか、情報提供することだけでも重要だと考えていますとのこと。また、患者の声を聴くことは病院の改善に重要なので、意見箱などを利用して是非声を聴かせて下さいとのこと。

20161023_倉田先生
大和成和病院の倉田先生

次に、昭和大学横浜北部病院教授の南淵先生のお話。「考心会で患者の皆さんの顔を見て僕が元気をもらいます」といつものセリフで開始。今朝まで札幌、その前は、会津若松、そしてその前は沖縄。全国を飛び回ってのお仕事。今日の医療制度の変化に触れて、倉田先生同様に、手術をやったら終わりではなくて、手術の後にその患者がどうなるのかを診続けるのを重視しているとのこと。その為にも外来診察をとても大事にされている。(なので、私も術後何年も南淵先生の外来に通い続けています。)また、南淵先生が大和成和病院にいらっしゃった時期、外来時間が増えてきた倉田先生と話したとき、倉田先生は、「僕から外来を取ったら何も残りませんよ」と仰ったとのこと。倉田先生の手術を受けた仲間も外来で定期的に倉田先生に会わることを楽しみにされている。


南淵先生

南淵先生ご出演のTV番組のご案内。来月放映です。研修医3名と南淵先生のやりとり?ゲスト(武田鉄矢さん,秋野暢子さん)も楽しみです。この番組、なんと6月から撮影準備を着々と進めていたとのことです。中川先生も出られるようです。皆さん、お見逃しなく。
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11月16日(水) NHK総合 午後10時25分~午後11時15分 「ドクターG」
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ドクターG

その後、深津さんが檀上に上がり、民間病院から大学病院に移られても変わらず患者目線の医療の取り組みを続けていますとのお話。

休憩を挟んで、今年1月まで東京大学医学部附属病院救急部・集中治療部に勤務されていた東大名誉教授の矢作(やはぎ)直樹先生のお話。「我が国のかたち」と題して、これまで36年間医療を続けてこられたが、良い結果でも残念ながら悪い結果になったとしても、ここで診てもらえて本当によかったと患者や家族から思ってもらえるかどうかが大事である。医療は進歩しているのに、患者や家族の満足度は下がってきているのではないかとのご感想。寿命を受け入れることができない患者や家族もいて、そういう方は取り乱すことが多い。そこから、お話はこの日本の成り立ちや神を信じる手段(宗教)をあえて必要としない日本の特異性や、天皇のお話などへ展開。東日本大震災直後、3月16日の天皇陛下のお言葉と米軍の援助活動、震災の現場近くのタクシー運転手が乗せた客がいわゆる幽霊であった実話、霊性や能の夢幻能のこと、矢作先生が学生時代に山の岩壁や、冬季北アルプス単独縦断を1か月かけて行われたときのこと、そしてその時の落下事故。人は亡くなっても意識は残る。講演内容は心臓病とは関係ない内容だったので少し意外だったが、普段聴くことができない方面の教養に満ちたお話だったので私としてはなかなか興味深く聴かせて頂いた。矢作先生の最初の著書「人は死なない」を合わせて読めば、今日の講演の理解度が上がるように思う。


矢作(やはぎ)先生

最後は、音楽演奏会。創立15周年の時は、パラグアイの楽器アルパの演奏会があったのを思い出す。今回は、女性だけのフルート四重奏団(フルート、チェロ、バイオリン、ピアノ)の約1時間のプロの奏者の演奏会であった。普段生の音楽を聴く機会が少ないので、とてもリラックスした気持ちになる音楽は心地よかった。


演奏会

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考心会 平成28年度総会&講演会

今日のお昼頃、相模大野駅で電車降りて改札を出ると、三原じゅん子さんにバッタリ。選挙活動中でした。昔、テレビで見ていました。恥ずかしくて写真は撮れずに、何故か一目散に考心会会場へ。

考心会は、会長の山本さんのお話からスタート。考心会の会報には、会員の皆さんの近況が載せられるのだが、その中から幾つかのエピソードをご紹介。そして、今年考心会創設20周年を迎えるにあたっての記念事業や患者力についてのお話。次に、やや堅苦しい総会では第一号議案から第五号議案までが承認されて、休憩タイム。

周りにはTTおじさんやバードさん、昨年から集まりやイベントでお会いしているFさん、Oさん、黒鉄さん。知っている仲間はそれくらい。会場は満席で160名くらいの参加者のようだった。

講演会第一部は、南淵先生の「近況報告その他」。 「覚悟の瞬間に、南淵先生が登場していますよ」と司会の方から紹介。家に帰ってからこの動画を観ましたが、考心会の講演と違って真面目に良い事言ってますね!先生!また、昨年の講演会でとても分かり易く面白く大腸内視鏡のお話をしてくれたNTT関東病院の大園先生が今晩のTBS「情熱大陸」に出演されるとのこと。

という訳で、昭和大学に移られて半年。南淵先生は体重がプラス10kgになられたとか。一方、あとで出てきますが、深津さんはこの半年で5kg痩せられたとか。

既にご存じの方も多い、心臓手術相談ラボ。世の中で患者が心臓手術について情報が欲しいと思っても、近年、医者、看護師、事務員に対する病院の管理が厳しくなり、ある意味口が堅くなっている、そんな中で患者が電話でアクセスして質問をするという環境がない。それを解決するための活動の一つがNPO法人化された心臓手術相談ラボだとのこと。心臓手術についての相談をしたい方が該当のフリーダイヤルに電話すると、深津さんが応対される。たまに南淵先生がでることもあるとか。フリーダイヤルなどの経費を賄うためにNPOに対する寄付のお願いもあった。

南淵先生の外来は、毎水曜日の午前が品川の稲波・脊椎関節病院、午後が南町田病院。月曜は沖縄で手術、火曜、木曜、金曜は昭和大学、土曜は札幌で手術というような毎日だそうだ。

南淵先生は、術後の患者でも外来にやってくれば診続けてくれる。だが、一般的にはそれは違っていて、よその病院から自分の病院に紹介してもらう紹介率、そして、手術後、紹介元に戻す逆紹介率、その両方を高めて患者をどんどん動かすようにするというのが病院経営の方向性だそうだ。心臓手術を受けなくては助からないという状況下で患者が心の光を見出した医者を、命の番人として術後も会いたい、外来で先生の顔を見ただけで安心できる、そういう患者さんは術後もどんどん僕に会いに来てくださいとのこと。患者が元気になるために医者を使う。そういう役割を南淵先生は喜んで引き受けて下さるとのこと。また、先生も患者から元気を得られてる。

ここで、話は深津さんのことへ。噂で聞いていたが、深津さんが胆嚢の手術を受けられたとのことで、深津さんが檀上へ。

3月下旬、食後に胃に強烈な痛み、息が浅くなり冷や汗が出たとのこと。2日後、同じ症状が発生し、診察を受けると胆嚢に石があり、手術が必要との判断。翌月、南町田病院で入院、手術。遅ればせながら、患者としての気持ちを、術後の創の痛みを含めて感じることができたとのこと。そして、病気になってある意味では良かった。食生活など、体に気をつけるようになった、自分の体の声を聴くようになったとのことで、我々心臓手術患者が思っていることそのものが深津さんの口から語られた。深津さんのすごいのは、自分の胆嚢の手術の翌日に、例の心臓手術相談ラボにかかってきた相談の電話に、入院中のデールームから声も出にくい状況でスマホで電話で応対されたこと。自分の持っている情報は全て話していると仰っている。

再び休憩を挟んで、第二部の講演は、大和成和病院心臓血管外科主任部長の畝大(うねだい)先生の「心臓手術後の飲み薬にういて」。大和成和病院は2010年には全国で第三位の心臓手術件数を記録したが、心臓手術の件数が多い病院は死亡率が少ない。15件/年以下の場合は3%の院内死亡率だが、51件/年以上だと1.54%に。それは医者の技量に加えて、スタッフの経験が豊かであることが大きいとのこと。講演の前半は、カナダに留学されていた4年間の様子が多くの写真で紹介された。モットーとされているのは、言葉が完璧でなくても患者の顔をしっかり見て診ること。Face to Face。また、「術者の5分間は患者の20年を変える」というDr.Marc RUELの言葉を紹介。丁寧な手術を行うことが術後の患者に与える影響の大きさを語ったもの。また、最新の海外の心臓手術の動向なども紹介。そして、本題の心臓手術後の薬の話へ。術後の薬には、抗血小板薬、抗血液凝固薬、抗コレステロール、胃薬、など8種類ほどの薬がある。私も飲んでいるバイアスピリンは、今日の参加者のほぼ全員が飲んでいると言って手を挙げていたくらい処方されている薬のようだ。バイパスや、形成術後の弁、生体弁に血栓がつきにくくさせる。但し、この薬は胃酸が起こりやすいので、同時にタケプロンなどの胃薬が処方されることになる。タケプロンより弱めでよければガスター。抗凝固薬としては、機械弁の人は一生、そうでなくても術後3か月ほどは通常飲むことになるワーファリン。重要な薬であるが定期的に血液の凝固具合を検査してコントロールする必要がある。納豆や青汁はNGといった食事制限もある。それに対して、ここ最近でてきた新しい抗凝固薬が、プラサキサ、エリキュース、イクザレルトといった薬。これらは値段が高いが、コントロールも不要(?)で食事制限もないとのこと。不整脈の患者であれば切り替えても良いかもしれないが、機械弁の患者がワーファリンの代わりにするのはリスクがあるらしい。薬を変えた後、血栓が機械弁に取りついてしまった症例写真が映し出された。抗コレステロール薬は生体弁を長持ちさせる効果がある(?)という報告もあるらしい。術後の薬についてはまだまだ発展途中であり、分からないことも多いのが実態だそうだ。全ての高血圧を抑える薬にはふらつきや立ちくらみの合併症が起こりうる。脳内出血などのリスクと予後のリスクを見極めてバランスをとることが大事だとのこと。

患者としても医者に言われて処方された薬を常にうのみにするのはなく、自分の体の反応に敏感になっておく必要があると思った。薬と自分の体の相性は自分が一番良く分かるのだから。


考心会会長の山本さんと参加者

次回、秋の考心会は、創設20周年記念イベントとして、かなり豪華な講演会と音楽演奏会や出版物まで予定されているそうです。考心会に参加を希望される方はこちらへ。(どこの病院、どこの先生の手術を受けた方でも考心会に参加可能です。)

考心会ホームページ http://www.koushinkai.net/
考心会連絡先メールアドレス:exam@koushinkai.net

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考心会 平成27年度講演会

考心会の秋の講演会が相模大野で開催された。年二回の考心会の集まりは、神奈川県大和市の鶴間か相模原市の相模大野のどちらかの会場で開催されることが多い。そして、相模大野で開催される日は何故か悪天候になることが多い。

参加者は約170名。今日の講演は、①南淵明宏先生の近況あれこれ、②大和成和病院心臓血管外科副部長の深田靖久先生の「最近の心臓血管外科手術とその安全性」、休憩を挟んで、患者同士のグループ討議と南淵先生への質問という内容であった。



南淵先生の講演は、東京ハートセンターから昭和大学横浜市北部病院への勤務先変更の話から始まったが、それ自体は一言でいうなら「流れ」であり、今は毎日楽しくネクタイを締めて大学教授として大学病院に通勤されているとのこと。昭和大学へは、深津さん、奥山先生と中川先生も東京ハートセンターから移られたとのこと。病院を移ったと言っても、それは芸能人が所属事務所を変えたのと同じようなレベルの話であり、心臓手術をやっていくことには変わりはないということで、話は次のテーマへ。5~10年前に比べると今の救急医療のレベルは大きく向上しているそうだ。行政がそのように世の中の医療制度を良い方向に改革し成果を出している面がある一方、今の医療が進んでいる方向が決して良い向きだけではないという話も。具体的に言うと、病院には医者の数やベッドの数、廊下の広さまでといった様々な制約が行政から果たされ、そうした基準で選ばれた病院にしか患者の望む医療を行うことが実質できなくしていくような方向性もある。その制約の中には、本来医者が持つ患者を治したいという本質的なモチベーションは含まれていないという課題。

大和成和病院の深田先生の講演は、1953年に世の中で初めて成功した心臓手術の歴史から始まり、70年代に入って心筋保護液の開発が進んだことで心臓手術は安全性を徐々に上げてきたとのこと。近年はステントの性能向上によりバイパス手術は件数自体は減ってきているが、一度に4本か5本といった本数のバイパスを繋ぐケースが多いらしい。代わりに徐々に件数が増えてきているのが弁膜症手術。虚血性心疾患の手術成功率は99.5%、弁膜症手術の成功率は98%というのが一般的な平均値らしい。また心臓手術全般において、待機手術であればリスクは1.7%程だが、緊急手術だと21.8%になるというデータも紹介されていた。そして、大動脈弁狭窄症で手術をした場合としなかった場合での5年生存率が5割も違う結果がレポートとして上がっていたのが驚きだった。最後は、心臓外科手術の最新技術のご紹介。ステントグラフトによる人工血管手術や創口の小さい小切開手術。そして、経カテーテル的大動脈弁留置術という開胸せずに大動脈弁をカテーテルで植えつける手術は近年注目されているらしく、日本でも2013年から保険適応になったとのこと。但し、基本は胸を切開して確実に人工弁を植え付けることが大事で、年齢や他の合併症の関係で止む無く開胸できないようなケースで初めてカテーテルでの人工弁手術は行われているのが現状とのこと。しかしひょっとしたら、医学の進歩で、人工弁はカテーテルで植えつけるのがこの先常識になっている時代がやってくるかもしれない。手術動画とアニメーションを多用してのプレゼンテーションはとても理解しやすかった。講演の最後に、術式の名前では一般人にも一番知られているのではないかと思われるバチスタ手術の実際の手術動画を見せて頂いた。拡張した心筋を切り取り縫い合わせるだけの技術的にはそれほど難しい手術ではないとのこと。実は、海外では心臓移植による対応の方が予後が良いとかで現在はバチスタ手術はそれほど盛んにおこなわれていないそうだ。国内では心臓移植がまだまだ制約が有り過ぎるのでこうした手術も有効であるとのこと。





さて、次はグループ討議。10人ほどのグループ毎に、「手術後の不安・悩み・薬等」というテーマで話し合いを行う。

討論が始まって心の中で思ったのだが、手術後の不安って本当にあるのだろうか。不安は先が見えなかったり分からないから沸き起こる。手術前は、これから自分が受ける心臓手術がどういうもので自分の体がどうなるのか分からないから、不安があるのは理解できる。
しかし、手術が終わってからの今日の皆さんが仰った「不安」は、再発のことであったり、薬や不整脈、創のケロイドのことなどなど。純粋に答えが分からないので聞きたい質問はあると思う。だが、質問したとしても「分からない」という答えしか返ってこないことを「既に分かっている」のに、質問することによって「それは分からない」とか「問題ない」という答えを期待通り得ることで不安(?)を解消しようとしている場合も多いのではないかと思った。

グループの代表何人かが、マイクで討論中に出てきた不安についての質問をし、それに答えられる南淵先生。
役に立つかもしれないと思った先生のお答えを一部メモすると、「中性脂肪とLDLコレステロールは100以下に。不整脈の薬はそれぞれ作用が違うが、高血圧の薬はどれも似たようなもの。ケロイドになるのは、寝ている間を含めて無意識に創を自分で触ってしまっていることが原因の一つでは?でも、ケロイドで死んだ人は居ない。珈琲や抹茶、アルコールの摂取は、自分の体が適量を知っている」

そして、南淵先生曰く、「最善のことは既にやったのだから、今、不安を持っても仕方ない」

その通りだと思う。次回はポジティブなテーマの方が盛り上がって良いかもしれませんね。



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平成27年度「考心会」総会&講演会

ゴールデンウィーク時期の恒例行事の一つとなっている「考心会」(心臓手術後の生活を考える会)の総会と講演会が神奈川県大和市の会場で開催された。



会員数が減ってきており(それでも500名以上)、会員の会費による収入で、今行っている事業規模を維持するのが年々難しくなってきているそうだ。世の中には毎年新たに心臓手術を受けている人が確実にいる。なのに、新しい会員が増えていない。会のアピール不足なのか、はたまた今の世の中インターネットを介して欲しい情報はなんでも知ることができるので会費を払ったり、会場にわざわざ足を運ばなくても良いと思う人が多いのか・・・

年2回、南淵先生のお話をたっぷりと聞けて、色々な医療機関の先生方の講演を聴けて、その内容を詳細に書き起こした会報を自宅まで送付してもらえて、何より多くの(元)患者仲間と会って情報交換ができる、そんな機会を得られる考心会への参加は、インターネットからだけでは得られない極めて有効な情報源であり、心臓を愛おしく思い続けることができる貴重な機会であると考心会の一会員である私としては強く思うのだが・・・

術前の方でも術後の方でも、またどこの病院で心臓手術を受けられた方でも考心会への参加資格はあるとのこと。来る者拒まず。興味のある方は是非考心会に入会されることをお勧めします。入会方法は、こちらのホームページへ。 メールアドレスは、exam@koushinkai.net

という訳で、今日の考心会の内容報告。参加者は約220名で、内50名ほどが会員に同伴されてきたご家族の方とのこと。開始前に受付に到着すると、幹事の方数名が私に声をかけて下さった。丁度一年前の考心会で、「心臓手術仲間の集まり」について檀上から少しお話する機会を頂いたので、そこで幹事の方々に顔を覚えて頂いた模様。(昨年の考心会の様子はこちらの記事へ)

総会では、第1号から第6号議案までが説明され承認された。そして、引き続き講演会へ。

①「近況報告・その他」 南淵明宏先生(大崎病院 東京ハートセンター長)

総会での議論を受けて、各個人が考心会の外に向かって情報を発信したりすることで、その価値を高めることができるのでは?考心会の当事者はあくまでも自分達、というご提案からはじまり、最近考心会で講演された先生方の異動先、マイナンバー制度、個人情報保護法の話、群馬、千葉や神戸で最近起こった医療事故の話、GW中に観られた映画の話、人と動物の心臓と血管の構造自体は実は同じだという話、太陽や地球の極の話、などなど。南淵先生の知識の幅広さを感じさせるバラエティ豊かな雑学講演。なんでも今は、病院で手術を実行するとそれをレジストレーションとして報告書を発行しなくてはならないとのこと。それがデータベース化されて医療業界では開示されていて、今回の群馬、千葉や神戸で起こったような医療事故についても一体何が行われたのか、そのデータベースを参照することで客観的に透明性をもって判断ができる世の中になってきているとのこと。医療の質の管理自体が上がってきていることを強調されていた。



②「足は第二の心臓 足の血管の話」 土井尻達紀(どいじりたつき)先生(大和成和病院 循環器内科副部長)

2010年から大和成和病院の循環器内科で働かれている土井尻先生。足の血管の動脈硬化は実は深刻だというお話。動脈硬化がまず最初にやってくるのは脳や心臓の血管で、そして大動脈、その次に足の血管に症状が現れるとのこと。足の血管に動脈硬化が現れる末梢動脈疾患になると、実はガンにかかったのと同じ程度の死亡率になるとのことで馬鹿にできない。足の血管というと、大動脈が両足に血液を送るために枝分かれする腹の下あたりから足の指の先までが対象だそうだ。循環器内科と言えば、心臓や肺のあたりが専門かと思っていたが、最近は足の血管も診るようになってきたとのこと。両腕と両足を同時に血圧測定するABIという検査で簡単に異常が調べられるそうだ。心臓手術を受ける人は必ずこの検査を術前に行っているはず。ベッドに寝て検査すれば普通は4つともほぼ同じ血圧になるのに、足の血圧が低いと異常ありとのこと。適度な運動療法が予防に効果的。治療法はカテーテル治療。カテーテル治療自体は、近年、器具や技術が向上しており再発も少なくなってきていて件数は減ってきているとのこと。しかし下肢カテーテル治療についてはむしろ増加傾向。また冠状動脈のように足の血管へのバイパス手術もあるそうだ。心臓と同じように足の血管も大事で、無理しない程度にできるだけ歩くことが予防になるとのこと。



③「消化器疾患について」 大圃健(おおはたけん)先生(NTT東日本関東病院 消化器内科内視鏡部部長)

ユーモアを交えた大圃先生のお話はとても興味深かった。内容は、内視鏡による胃や大腸のガンの治療について。初期のガンはほぼ100%治すことができ再発もないとのこと。胃がんは最近よくマスコミでも言われているがほとんどはピロリ菌が原因だそうだ。日本人の50%がピロリ菌に感染。特に50歳以上の人はかつて衛生状態の良くない井戸水を飲んだり、祖父母、両親からの感染で80%の人が感染しているとのこと。若い人は比率は下がる。(ちなみに私は昨年ピロリ菌の検査を行ったが幸いピロリ菌はいなかった。)もし保菌者の場合は、1週間抗生物質を飲むことで除菌できるそうなので、まずは皆さん検査を受けられることをお勧め。ピロリ菌の感染は5歳未満の時に起こるそうで、それ以降は感染しないとのこと。年間5万人の人が胃がんで亡くなっている。その原因の99%がピロリ菌とのこと。60歳を過ぎると胃がんの発生率が高まる。
次に、大腸がん。こちらは40歳を過ぎると発生率が高まる。胃も大腸も初期には自覚症状は全くないらしいので定期的な検査が有効。大腸は長さ2mもある、いわゆる「モツ」。ポリープを放置するとガン化する。食事や生活環境が原因と言われているらしい。便潜血検査が安価で容易だ。もしその結果で精密検査を指摘されたら内視鏡検査を受けるべき。40歳を過ぎて大腸の検査でなにもなければその後は3年に一度、胃の方が何かあれば進行が大腸より早いらしいので1年に一度、できれば内視鏡検査を行うのが望ましいとのこと。(ちなみに、私は2年前、便潜血検査で要精密検査となり内視鏡検査と同時にポリープを切除してもらった経験がある。年に1回の大腸の内視鏡検査は行おうと思っている。)



今日会場にいた顔なじみの(元)心臓病仲間は6人。考心会後、近くのカフェでビールを一杯。それぞれの近況をしばらく語り合ったあと、それぞれの帰路へ。



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プロフィール & メール

Author: カムバックハート

カムバックハートブログバナー

カムバックハートこと、鍋島と申します。神奈川県川崎市在住の49歳男性。

2008年12月に僧帽弁形成手術を受けて、第二の人生をスタートさせることができました。

南淵先生と私

南淵先生と私(術後の初外来にて)

フィルムで写真を撮るのが趣味です。(元)心臓病仲間のポートレート写真展の開催に向けて準備中です。詳細はこちらの記事。「創と私」「術前 vs 術後比較ポートレート」「病気を支えた家族と(元)患者のツーショット」「笑顔の(元)心臓病仲間のポートレート」のテーマで作品制作中です。これから心臓手術を受けるかもしれない人達に元気になる期待と勇気を与えたいと思っています。

心臓病仲間の輪に入りたい方や、ブログについてのご質問、お問い合わせのメールはお気軽にこちらへ どうぞ。但し、私は医者やカウンセラーではないので医学的なご質問にはお答えできません。初めての方は簡単なプロフィールをお願い致します。

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このブログは、私が弁膜症の僧帽弁閉鎖不全症という病気に診断されたところから、入院、手術、退院、その後の生活という流れで時系列に記載しています。2008年12月当時の状況ですので、その後の医学の進歩で内容的に古くなっている部分があるかもしれません。実際の患者にしか分からない心理的な面の記述をできるだけ表現したつもりです。最初から読まれる場合は、「★はじまり ~こちらからご覧下さい~

コルコバード


南淵明宏先生の公式サイトにある「勇患列伝」 その7に出てくる「平松」とは私のことです。

yomiDr.のサイトにある世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ にこのブログのことを書いて頂きました。こちらの記事には第三回(元)心臓病仲間の集まりについて書いて頂きました。
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