術後3年半の体の調子

過去の記事に、術前術後の体調の比較を書いた。術後3年半を過ぎて改めて自分の体の状態を客観的に評価してみた。

(1)子供の頃から虫歯はあって継続的に歯医者に通っていたが、前回歯医者で治療したのは5年前。術後は歯医者要らず。毎年、会社の健康診断の際に歯科検診があるのだが、虫歯はなく歯石もほとんどついていない、歯磨きも丁寧に出来ていますと褒めてもらえた。ちなみに、歯磨きは食後できるだけ早く、朝、昼、晩の最低3回、時に4回丁寧に行っている。電動歯ブラシは使っていない。歯と歯茎の境目を丁寧にブラッシングしたり、一本一本の歯を10回づつ磨くことを意識したりしている。また一日一回は歯間ブラシを使用。それでも取れていない汚れがあるので、楊枝のようなもの(金属製の細長いもの)でそっと掃除。やりすぎは歯を痛めるので要注意。術前はよく歯茎から出血したり冷たい水を口に含むと痛かったりしたが、術後はそういう不具合は全くなくなった。
(2)術前は体が疲れると良く大量の鼻血が出たが、術後は一回もそういうことがない。バイアスピリンを飲んでいるから血液サラサラで出血すると止まりにくいと言われているが、そもそも出血しなくなったので問題がない。
(3)血液検査は、3か月毎の外来と年1回の会社の健康診断で年間5回も実施。中性脂肪がやや高めだったが、ここ2年は脂質、血糖、コレステロールの全てオールA。尿酸値だけは以前から高く術前から服薬を続けている。アロシトール200mgを一日一回。その結果、検査値は常に正常値を維持している。血圧も以前はかなり高かった。術前から降圧剤を服用。術後は、心臓の動きが元気過ぎたので働きを抑えるアーチストやワソランを服用していて、それらが血圧を下げてくれている為なのか、現在は120/80以下。
(4)ウエストサイズは、手術を受けた頃は恐らく80cmくらい。今は71cmになった。BMIはやせ気味と表示されるが、現在の体重が私にはベストの状態だと感じている。
(5)心電図検査をすると必ず出るのが、完全右脚ブロック。これは心臓手術で心臓の壁を開けるのにメスを入れた際に何かしらの繊維か何かが切られた結果だと本で読んだ記憶がある。心臓の働きには特に問題ないようなので無視している。
(6)術前は多少あった不整脈も今は全くない。そういえば最近は不整脈が無いなぁと思い出して気付いたくらいだ。ちなみに、周りに話を聞くと、不整脈とはどのような症状なのか分からない人が結構多い。これが不整脈だと実際に経験しないと、「脈が飛ぶのが不整脈だ」と言われても実感を得ることができないのだ。
(7)仰向けに寝れない状態が術前数年から続いていた。術後は胸骨をかばう必要性もあるので仰向けに寝ざるを得なかったが、その後再び仰向けに寝るのが何故か困難になった。寝入る際は横向きでしか寝れないが、夜中や朝方、目が覚めると結局仰向けに寝ていることが多いので単なる癖かなと思っている。
(8)右方向の首の痛みは術前からあったのだが、術後はかなり改善した。
(9)便秘も下痢もなく、お腹の調子はすこぶる快調。
(10)いつでもどこでも比較的容易に寝ることができる性格だが、最近、夜、美味しいコーヒーを飲むと眠れないことがあった。カフェインに敏感になったのか?
(11)早起きが辛くなくなった。これは年のせいだろうか?
(12)切羽詰まった時や、焦ったときでも落ち着いてゆっくり行動をとることができるようになった。それが副交感神経に作用し体をうまくコントロールしている気がする。

ところで、3度目の手術後、早くも約1カ月になるマダムアリスさん。やはり色々な体の変化が起きているようだ。こんなメールが今日届いた。
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後、皆の顔が今までと全く別人に見える人と、前以上に、綺麗に整って見える人と…不思議なくらい違いがあるんだけれど…( →_→)なんなんだろう…豚さんの弁が移植されたから!?まさかよね~???
心が清く、優しく、強く、響きやすくなったのは納得出来るけれど、見る目!?脳の発信角度が変わったの!?
受ける眼球が変わったの!?

本当に驚く変化なのよねっ、誰か弁置換した方で同じような体験者いるかなぁ~。
次回の集まりで、聞いてみ~ようd(⌒ー⌒)!

マダムアリス
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お勧めの一冊 「受ける?受けない?冠状動脈バイパス手術」 

「受ける?受けない?冠状動脈バイパス手術 ~読んでみてから判断しよう」

南淵先生の著書ではあるが、バイパス手術の本なのでなんとなく読むのを後回しにしていた。勤め先の近くにある図書館に蔵書があるのを知り、直ぐに予約して手元に・・・

「しまった!もっと早く読んでおけば良かった!」と思った。

心臓の基本的な構造、狭心症、心筋梗塞といった病気と症状についての知識、カテーテル治療かバイパス手術かの適応の判断基準から、手術の手順、ICUの詳細、術後の経過、各種合併症のリスク、リハビリや術後の生活について、手術の費用や、医師への謝礼について、創の痛みや食事、抜歯についてなど、実際に心臓手術を受ける患者にとって実践的で有効な情報が分かりやすく解説されている。

弁膜症手術は心臓の中の弁を修理する訳だから人工心肺を使用して一時的に心臓を止めることは必至。人工心肺を使わないオフポンプのバイパス手術が世の中に広まりだし南淵先生も症例を重ねつつある頃に書かれた本だが、当時はバイパス手術でも人工心肺を使った手術が多かった。人工心肺を使うのあれば、手術の手順などはバイパス手術も弁手術も大枠は同じなので、この本に書いていあるほとんどの内容がバイパス・弁を問わず心臓手術を受ける方どなたにも参考になる情報だと思う。

特に、術後患者をICUでどのようにケアするのか、どのようなモニターに繋がれていて、それぞれがどのような体の状態をリアルタイムに表現しているのかを詳しく知ることができて興味深かった。心電図、動脈血圧、肺動脈圧、O2(酸素)飽和度、心拍出量、気道内圧、呼吸している空気の量、吸気ガスの分圧などなど。そして血液検査や尿の出具合で状態をどのように判断するのか解説してある。どこまで自身の呼吸力が回復すれば人工呼吸器の管が抜けるのかも分かる。心臓手術体験仲間の談として、この気管内チューブの管だけは意識が戻るとかなり辛いので目が覚めたらできるだけ早く抜いてもらいたいものらしい。と言うのも、私の場合はまだ麻酔から覚めたのかどうかも分からないくらい早い時期に抜いてもらえたのでその苦しみが分からなかったのだ。

多くの心臓病患者が元々持っている糖尿病などの別の病気との関係や、術後起こりうる脳梗塞や心不全などの重い合併症から、気胸、胸水といったよくある合併症、そして誰でも多かれ少なかれ必ず発生するらしい不整脈まで。読み進めるうちに、心臓手術にはこのような危険なリスクが沢山あるのかと怖くなる方もいるかもしれない。だけど、これらのリスクを知らずに手術を受ける方が今の私にとってはよっぽど怖い。リスクを知って、そのリスクを理解し受け入れる。この段階で不安は無くなってくるはず。そして、自らが信頼できる病院と執刀医の手による手術を受けることを自己決定するのが大事だ。

「手術の前日、緊張して眠れない場合は睡眠薬をもらって下さい」と書いてある。仮に患者が一睡もできなくても手術には一切影響ないそうだ。もっとも私の知る限り、手術前日に緊張と不安で眠ることができなかったという人は一人もいない。皆さん、それまでに不安は解消し、来るべきイベントの日に備えて気持ちを落ち着かせることが結果的にできてしまうようである。私もまさにその通りであった。

漫画家でもあり産婦人科医でもある茨木保先生のマンガ・イラストが随所に盛り込まれていて楽しい。ICUで術後の患者が各種の管に繋がれてベッドに寝ているイラストがなかなか良い感じ。「実践 人工心肺」「ナースのちから (CABG手術編)」にも茨木先生のマンガが載っている。



この本は、南淵先生が40歳の時の著書。たまたまそれは私が心臓手術を受けた時の年齢と同じだ。

南淵先生の他の著書には書かれていない内容も多い。南淵著書コレクションがまた一冊、私の2畳半の書斎の本棚にやってきた。既に絶版だがアマゾンで中古本として手に入るので機会があれば読んで頂きたいお勧めの一冊として紹介させて頂いた。

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マダムアリスさんと姫野さんの手術

とある金曜日の午後、大崎病院東京ハートセンターの南淵先生の初診。我らが(元)心臓病仲間のマダムアリスさんにゆくりなくも再々手術適応の宣言がなされた。因果を含めるような宣告ではなく、あくまでも再手術を強くお勧めしますとの説明であったと推測する。初診診察日から3日後の翌週月曜日に入院、そして木曜日に手術でスケジュールが決まる。それはいつかはやって来るとご本人にも分かっていた3度目の心臓手術(一度目は33年前の先天性心房中隔欠損症の手術、二度目は3年前の僧帽弁形成術)。だが、誰しもこんなに早くその日がやってくるとは思っていなかったはず。

金曜日の外来後、診察結果を伝えるメールがマダムアリスさんから私宛に届いた。突然の内容に私も驚く。直ぐに電話せずにいられずかけるが話し中。三つ葉葵さんと先に電話で話をしていた模様。暫くしてリダイヤル。繋がった電話の先のマダムアリスさんは、きっと度を失いすっかり落ち込んでいるのではないかと思いきやいつもと同じ明るい調子の声が返ってきた。本人に手術を受けることへの迷いもなく、執刀医の南淵先生に対する信頼もできあがっているのを感じたから、これは何も心配要らないなと直感で分かった。

翌日、土曜日。やはり術前に会いたいと思い、三つ葉葵さんと二人でマダムアリスさんを訪ねる。ビジネス街のショッピングモールでランチブフェ。「入院したら暫くお酒飲めないから、今日はビールで乾杯しておく?」という冗談も・・・マダムアリスさんの術前のポートレート写真を撮る。術前に抱えている患者の不安と期待の心情が無意識に写り込んでいるはずだ。この写真を術後の写真と対比させて眺めることで、「自分ってこんなに見違えるように元気になったんだなぁ。心臓手術を受けて本当に良かったなぁ」と思ってもらえると思う。

月曜日に入院。都心にある大崎病院東京ハートセンターなので検査室も病棟もこじんまりとした感じだが、その分機能的でまた随所に大きな窓があるので圧迫感は思った程感じさせない。

入院後の検査は、心臓カテーテル、胸部CT、血液、尿、頸動脈エコー、頭部CT、ABI/PWV とのこと。検査の様子や先生とのインフォームドコンセントの状況、ご家族の様子など、入院後もまめにメール連絡が来る。手術を迎えるまでのマダムアリスさんはやはりいつもと同じく明るくて患者としての強さを発信していた。

木曜日。その日二番手の手術。昼頃、そろそろ麻酔かけたかな・・・そろそろ癒着もはがして南淵先生が生体弁置換している頃かな・・・ICU入ったかな・・・目が覚めたかな??と、頭に手術の様子を思い描く。

21:19。突然、スマホが振動・・・差出人マダムアリスのメールが一通!えぇ~ありえない!記録だ!これまでに手術当日ICUから連絡をくれた仲間はいない、と思ったが、実は、お嬢さんの代筆で無事手術が終わった旨の連絡を送って頂いたのだった。流石に手術当日に本人がメールは打てない。

我らの最も大事な(元)心臓病仲間の一人であるマダムアリスさん。南淵先生には我々カムバックハート仲間からの暗黙のプレッシャーがかかっていたと想像するのだが仲間の手術を見事に終えてくれた。

手術翌日の金曜日。三つ葉葵さんがたとえ会えなくてもよいからと大崎病院東京ハートセンターに向かう。受付でICU滞在中のマダムアリスさんに会いたいと伝えると、マダムアリスさんからも三つ葉葵さんは家族同然ということで配慮がありICUへの入室を許可され会うことができたとのこと。既にベッドで起き上がって、血色も良くて入院2日前に会った時よりも元気そうだったとのこと。持ち前の明るさでICUでも人気者になっていたようだ。


手術翌日、ICUにて(三つ葉葵さん撮影)


ドレーン、ICUにて(三つ葉葵さん撮影)

その週の日曜日は、第四回(元)心臓病仲間の集まりを開催した日。もちろんマダムアリスさんも参加予定だったが残念ながら欠席。いや、本当は、南淵先生もICU看護師の伊崎さんもリハビリ室の徳田先生も集まりに居た訳だから、外出許可をもらって点滴をかついで救急車で会場に登場できたのかもしれない(笑)

手術翌週の土曜日、午後2時。(元)心臓病仲間数人でお見舞いに行く。3Fリハビリ室で丁度心臓リハビリの最中。大きなボールを壁にそって動かす運動や自転車漕ぎ(23分間)。最後に心臓リハビリ卒業証書を皆の前で授与され涙するマダムアリスさん。

その後、4Fのデイルームに移動し、マダムアリスさんと同じ日に南淵先生の手術を受けられた姫野さんも交えてお話する。姫野さんは僧帽弁形成術を受けられた若手。術前にこのブログにコメントを頂いていた。その日はお二人共、術後9日目。術後の人生のありがたさがひしひしと伝わってくるお二人の言葉の数々。そして、お二人揃って、翌日、術後10日目での退院が決まったとのこと。極めて順調な術後経過だと思う。姫野さんとマダムアリスさんは同じ手術日に同じ執刀医の手術を受けたことで親近感も深まり、まるで姉弟のようだ。

無事に退院された後、最初の週のお二人のご様子は次の通り。

マダムアリスさんは、これまで動悸があるのが普通の生活だったけど、心臓がトックントックンととても静かになったとのこと。開胸した創の痛みと筋肉痛があるが心臓はすっかり楽になり、前回の僧帽弁形成術の時の術後の経過とも大違いに良いらしい。リビングに置かれたソファーベッドで、ペットのワンちゃん達に包囲されて療養中。家事もボチボチとやりながら、リハビリメニューを適度にこなしたりさぼったりして今月は静かに過ごしますとのこと。

姫野さんは、ラーメンの美味しい匂いに誘われて食べてしまうけど汁は残す、お酒は飲む量をあらかじめ決めておくなど、俗世の甘い誘惑とうまく折り合いを付けて自己管理されているご様子。東京ハートセンターについても、「病院と言うより母校のような感覚です。退院時の忘れものを取りに今日4階病棟へ行くのですが職員室に行く様な気分で緊張してます(笑)」とのこと。


術後4日目一般病棟にて(マダムアリスさん提供写真)


術後9日目のマダムアリスさんと姫野さんを訪ねて、デイルームにて

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心臓手術の創

今日で術後丁度3年半。風呂上がりに記念の創の写真を撮った。



以前の記事にも書いたが、私は術後2カ月目くらいから近所の皮膚科に通い始め、ケロイドになるのを抑えるリザベンという錠剤とビタミンC錠、それからスペシャルブレンドの塗り薬を処方してもらい、一年弱継続した。そのお陰かどうか分からないが、男にしては勿体ないくらい創あとはきれいな仕上がりとなり、遠目に見ると創の存在が分からないくらいだ。創の途中経過はこちら。首の動脈や静脈から挿していたカテーテルのあとは全く残らないのに、太さが太いのか、ドレーンのあとは二つきれいに残っている。皆さんそうだ。

心臓外科は心臓の機能を治すことが目的なので、もし創を気にされる方は、やはり術後暫くしたら皮膚科に通うのが良いと思う。大きな病院でなくても近所の開業医で十分。皮膚科とは言っても、結果的には体質的なものが一番影響するので、何もしないで放っておいてもとても綺麗な創あとになる方もいれば、逆にケロイド状に盛り上がった創になる方もいる。

いずれにせよ、創は我々にとっていつも胸に掲げている勲章のようなものだ。

活動を開始しつつあるお姉さまシリーズの面々も、やはり女子ということで創は気になるものだそうだ。三つ葉葵さんが術後1年7カ月強の創を少し披露してくれた。アレルギー体質の三つ葉葵さんだが、創は満点級の綺麗な状態。胸元の開いた洋服も全く気にならない様子だ。



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たかしげさんの2度目の「心臓手術の決断」

人生で2度の心臓手術を経験された、たかしげさん。その2度目の手術の前に私はたかしげさんと会っている。2度目の手術を受けるか否か深く悩まれていたその時期だ。結果として、手術を受けることをご自分で決断され実行。術後約1年を経て、先日の第四回(元)心臓病仲間の集まりでは丸で別人かと見違えるように元気な様子を拝見することができてとても嬉しかった。

そのたかしげさんからの、「心臓手術の決断」についての手記を頂いたのでご紹介させて頂きたいと思う。

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「心臓手術の決断」

曲がりなりにも喜寿と金婚まで辿りついたシルバー爺はいろいろな人生の岐路に出くわし、なんとか腹を括って決めた方向を歩んできた。自分の手腕や努力でどうにもならないことに決断を迫られることが人生では少なからずある。それは47才と77才の心臓手術だった。医師の診断と手術の奨めにどう決断するか迷う。

47才の時は「大動脈弁」を人工弁に置換手術。中学入学時の検診で心音が異常だと言われながら健常者と同じように仕事にスポーツに励んできた。世帯盛り、男盛りの今「どうゆうことなんだ!」と愕然として心臓の働きや手術の知識を知ろうとした。当時は市販の医学書から知識を得るのみで医師の説明を耳で聞き理解に努めたが素人には難しい。目で分かるのは胸部レントゲンとエコー検査、心電図のアウトプットだけだ。心臓の大きさが常人より肥大していると指摘された、正常の大きさは?初めて視る心エコーの画像で大動脈弁が開き閉じている動き程度は分かるが正常、異常はよく分からない。「人工弁置換手術だ!」と医師に言われ疑いと不安を混じえて「ハァー?」と反応して直ちに系列の大学附属病院入院の手続きが進められた。胸を切り開き心臓に25mmの人工弁を縫い込む大手術を受けるにしてはあまりにもあっ気ない決められ方だった。心配は膨(ふく)らむ。

息苦しさはない、一時(いっとき)の細動のような症状もない、仕事は大きなプロジェクトで連日残業勤務、晩酌は疲労回復に欠かせないと勝手に決め、たまには仲間と酒盛り、空きベッド待ちも忘れるようだった。こんな毎日だから手術の切実感はない。心臓を切開して人工弁を縫い込まれる危険性に迷いや不安を意識している暇はないほどクレージーな業務だった。周囲も他人事だからか無関心だ。自分の躰にメスが入るにしては医師のペースで同意書にサインした。

術後30年、医術は進歩しネットで心臓の知識も知った。定年退職し趣味に明け暮れ悠々の毎日だったが、息苦しさ、歩行困難、肩で息をする会話、むくみの症状。これを裏付けるように既設人工大動脈弁は改修術が必要、僧帽弁狭窄、三尖弁不全、大動脈瘤が発覚し、心臓が大きく癒着していると診断された。あまりにも患部の多さにいよいよ年貢の納め時かと思った。

手術リスクとして総合すると18.9%と宣告された。なんで0.1単位のリスクが告げられるのか、訊いて答が出てもリスクは下がらない。患者の心理を見極めて医師の裁量で高低する場合もあるとネットで知った。が、極めて高いリスクだ。

21世紀に入って10年余の時代だ。メディアやインターネットは普及し知らなくても良いことまで耳目に容赦なく押し寄せて来る。開発された医療機器、医術、医療事故など図解入りで素人でも分かり易く載っているし、進歩と安全も説明されている。

一方医療ミスや医療器具操作ミスも知ることになる。神の手医術と崇められる医師の存在。その病院の実績と評価。インフォームドコンセント。セカンドオピニオン-------と医師、病院の選択は便利になったようだが情報過多が逆に選択に迷いが生じいろいろ知って怖さが増し決断が鈍る。

ものつくりで生きたオトコは“ヒヤリハット”を体験しこの心掛けを頭に叩き込まれて安全と品質を確保してきた。心臓はメカニカルな臓器でポンプ機能やエンジン機能が弁の腱索、開閉、筋肉、血管、神経などで複雑に構成され規則正しく脈動して人は生きているのだ。
こと、心臓手術に関しては“ものつくり”と似ていると思う“ヒヤリハット”は医術の世界でも起こりうることで同じだろう、ヒヤリハットが重なれば致命的だ、特に心臓手術は生命の根源の部位で精緻を極める技を必要とする。

医の分野で神の手と崇められている医師でも人の子だ、多忙過労、体調、心痛などの悪コンデションもありうるだろう。ましてやプロジェクトチームでの連携プレーだ。一人の未熟や医療機器の操作ミスが致命的になる場合もあるだろう。

また、ものつくりの分野では技術の伝承や若手育成は必須だ。同じように医術の伝承で若手医師が担うこともあるだろうと思う。どの分野でも読み書きソロバンだけでは匠になれない経験実績が不可欠だ。病院内部の事情は患者にはつんぼ桟敷で分からない。患者は結果良ければ全て好しだ。

これらいろいろなことを考えると不安と心配が増し決断は鈍る、何を優先して何を妥協して決断するか患者の置かれた環境と死生観かもしれない。永年苦渋や清濁ごちゃ混ぜに体験して生きてきたシルバー爺でも医の実状や病気の知識を知れば知るほど決断が鈍る。

二人の子供の家庭は皆健康で健全。俺にもしものことがあったら悲しむだろうが俺には後ろ髪を引かれるようなことも悔いはない。病弱と言われながらも古稀まで働き、喜寿まで生きてこられた。誇れるものはないが、反面恥じることもない。でも後10年位は連れ添って援けてくれたカミサンと共に暮らしたい。手術を360度の視点から熟考した。

俺の不安顔に主治医はセカンドオピニオンを投げかけてくれたが、病院や医師の選択に素人がエネルギーを費やして比較調査しても限界があるし紹介制度の兼ね合いもあるだろう。結局は15年間術後の心臓病をフォローして頂いた主治医を信頼しリスク18.9%で成功の保障が無いままに手術同意書にサインし決断した。人工心肺の援けで13時間の手術を終えた。そしてオペ後一年を経過してポンプヘッドの兆候もなくこんな文章を綴れた。
         了
たかしげ 2012年6月    

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東京ハートセンターの売店

大崎病院東京ハートセンターに売店がオープンしたとのことで早速見学に行ってきた。あいにく土曜日はお休み!ガラスの外から中を拝見する。



東京ネコセンターTシャツも販売されているとか・・・ネコ先生(南淵先生)の冗談かと思っていたが、本当に販売されているのを見てビックリ!欲しい!次回の(元)心臓病仲間の集まりの公式ユニフォームにさせて頂こうと思う。ブラックジャックやリボンの騎士のポスターが貼ってあり、南淵先生の趣味が強く反映された売店だなと感じた。



日用品・飲食物の他に、南淵先生の著書が販売されている。特に、「私と猫」 ひたむきに猫が好き!という猫好きな有名人のインタビューが載っている単行本が一番目立つ位置に置いてあった。もちろん、私はこの本は既に所有している。南淵先生のご自宅の部屋の写真が載っていて興味深かったので。そして、私もいつか猫を飼いたいなぁと思っている次第である。



患者用の携帯心電計も売っている。但し、これは少し高価。あと、術後、胸骨の痛みを緩和させるために使うハートハガーもS,M,Lサイズ揃っている。さすが、心臓病専門病院の売店だ。聴診器も売り出したらどうですかね。きっと皆さん欲しがるような気がする。ちなみに私は術後にネット販売で聴診器を購入した。マイ聴診器は【Littmann】リットマン クラシック II SE (ツー・エス・イー)。リットマンという医療用機器メーカー製でとてもしっかりとした作りの長く使える聴診器だと思うので購入するならお勧めです。聴診器についての過去のブログ記事もご覧下さい。ふと思ったが、弁膜症の入院患者のお見舞いや退院祝いに聴診器をプレゼントするのもシャレていて良いのでは?

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第四回(元)心臓病仲間の集まり

6月3日の日曜日。無事に第四回(元)心臓病仲間の集まりを横浜にて開催することができた。

集まったメンバーの統計データは次の通り。
・術後の(元)心臓病患者が17名、医療関係者が3名の合計20名
・美女8名、青年12名。
・初参加12名、リピーター8名
・20代から70代までの幅広い年齢層
・関東圏以外からも4名の参加者
・受けられた手術名は、大動脈弁置換が5名、僧帽弁形成術が10名、僧帽弁置換術が1名、心房中隔欠損と三尖弁形成が1名。
・南淵先生の元患者は8名。葉山ハートセンターの磯村先生執刀の元患者さんが2名。残りの7名はそれぞれ別の執刀医。
・術後40日目から、最初の手術が30年前の方まで
・2012年に手術を受けられた方が2名、2011年が4名、2010年が4名、2009年が4名、2008年が1名、2007年が2名

今回の集まりはブログ記事を読んで連絡を頂いた方を先着順で受け付けたので、過去の参加者で開催案内に気付かれなかった方も多いかもしれない。

参加頂いた医療関係者とは、大崎病院東京ハートセンターから、昨年に引き続き参加して頂いた南淵先生、夜勤明け直接病院から駆けつけて頂いたICU看護師の伊崎さん、それからイケメンリハビリ室の理学療法士の徳田先生の3名であった。

いつも通り、現地に集まった仲間同士の会話が果てしなく続く。一年ぶりに顔を見て今年もお互いの健康を確認しあう仲間多数。術前にお会いして治療に向けて色々語り合ったたかしげさん。術後今日が初めての再会であったが顔色の良さに驚く。明るくおちゃめなお姉さん方2名にも出会い、遠方からわざわざ参加して頂いた仲間の方々にも感謝する。メールの世界でコミュニケーションしていた方々と実際に顔を合わせて話をすることでより親近感が湧く。人は心臓手術を受けると一時的に加齢に逆行する成長を遂げるのは間違いないと感じた。

リハビリ室室長の徳田先生からは、参加した(元)患者の皆さんに入院中や術後についてのアンケートが配られ、皆で回答した。近い内に心臓リハビリの本を書かれるそうなので期待しよう。

ICU看護師の伊崎さん。私が心臓手術を受けてICUに滞在したその日の夜勤の看護師さんである。ICUの裏話を明るく語ってもらった。夜勤は勤務時間が長いだけ。患者は寝ているから。だけど、日勤は短い時間にやるべきことが沢山あって大変なのだそうだ。

患者は手術が終わって麻酔から目が覚めると、果たして今は一体日中なのか夜なのか分からなくなる。ICUは一般病棟と違って四六時中部屋の明かりがついていて、計器の音も煩く鳴っている。日の光が入りにくい部屋だと尚更昼夜の区別がつかなくなる。そんな患者の体に対して夜は夜、昼は昼だということを覚えさせるために、夜は薬で眠たくしたり、朝は患者の耳元で「朝だよ~!」と叫んで患者をたたき起こすのだそうだ(笑)。

参加者の皆さんから聞かれた南淵先生に対する言葉。「とても大きなオーラを感じました(^ ^)
」「悩んでいたけど、それでよかったんですよ!と先生に言ってもらえてちょっと気が楽になりました」「緊張してしまいあまりお話ができませんでした」「南淵先生に参加していただいたことには感動さえ覚えました。本当に気さくな親しみやすい先生ですね。少しも偉ぶったところがなく、気軽に私たちの話を聴き、又、話してくださる姿勢に好感を持ちました」、などなど・・・

二次会は約半分の人数で、横浜中華街へ移動。丸テーブルに座っての美味しい食事。「弁輪がどうのこうの・・・」「前尖と後尖が・・・」「僧帽弁より大動脈弁の方が人工弁の直径が小さいのよ・・・」なんていう心臓手術に関する専門用語が会話の中に飛び交っているのを、皆が「うんうん、そうそう」と理解している状況は、傍から見ている人にはかなり奇異なことだろう。一次会では個々のグループ単位での会話が主であったが、二次会はみんな打ち解けて会話もより盛り上がったのではないかと思う。

今回は術前の方は一人もいらっしゃらなかった。手術に立ち向かって行く際の不安を解消する最大の方策は同病の仲間との出会いだと、私のこの目で多くの実例を見て感じている。是非こういう集まりの機会を活用して頂きたい。

この集まり、客観的に考えるとタダの纏まりの無いランチ会。もう少し司会進行や取りまとめがあっても良かったかもしれない。でも、堅苦しい会合にはしたくない。自分の経験を語りたい人はそれを周りの参加者に熱く語り、一方、聞き役に回るのも良し、私のように写真を撮り歩いたり、何かブログネタがないかなとあちこちの会話を嗅ぎまわったり・・・参加者其々が自由に、自分流のやり方、表現の仕方で楽しんでもらえたら良いと思っている。そして、例え一人でも、気が合いこれから一生連絡を取っていけるような(元)心臓病仲間を見つけて頂くことができれば、集まりの目的は達することができたのかなと思う。

「勇気を出して参加を決意しました」「術前はご連絡できませんでしたが、無事手術が終わりどうしてもカムバックハートさんに連絡したくなり連絡しました」など、そういうメールを頂くことが多い。今後もこのようなスタイルで地道に集まりを続けていきたいと思いますので、次回はあなたも是非ご参加下さい!

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南淵先生のブログの6月7日の記事にこの集まりのことを書いて頂きました。
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(三つ葉葵さん撮影)



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プロフィール & メール

Author: カムバックハート

カムバックハートブログバナー

カムバックハートこと、鍋島と申します。神奈川県川崎市在住の49歳男性。

2008年12月に僧帽弁形成手術を受けて、第二の人生をスタートさせることができました。

南淵先生と私

南淵先生と私(術後の初外来にて)

フィルムで写真を撮るのが趣味です。(元)心臓病仲間のポートレート写真展の開催に向けて準備中です。詳細はこちらの記事。「創と私」「術前 vs 術後比較ポートレート」「病気を支えた家族と(元)患者のツーショット」「笑顔の(元)心臓病仲間のポートレート」のテーマで作品制作中です。これから心臓手術を受けるかもしれない人達に元気になる期待と勇気を与えたいと思っています。

心臓病仲間の輪に入りたい方や、ブログについてのご質問、お問い合わせのメールはお気軽にこちらへ どうぞ。但し、私は医者やカウンセラーではないので医学的なご質問にはお答えできません。初めての方は簡単なプロフィールをお願い致します。

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ブログ開設: 2008年12月
お知らせ
このブログは、私が弁膜症の僧帽弁閉鎖不全症という病気に診断されたところから、入院、手術、退院、その後の生活という流れで時系列に記載しています。2008年12月当時の状況ですので、その後の医学の進歩で内容的に古くなっている部分があるかもしれません。実際の患者にしか分からない心理的な面の記述をできるだけ表現したつもりです。最初から読まれる場合は、「★はじまり ~こちらからご覧下さい~

コルコバード


南淵明宏先生の公式サイトにある「勇患列伝」 その7に出てくる「平松」とは私のことです。

yomiDr.のサイトにある世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ にこのブログのことを書いて頂きました。こちらの記事には第三回(元)心臓病仲間の集まりについて書いて頂きました。
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