マダムアリスさんの心臓手術のDVD鑑賞


(南淵先生執刀中!)


(生体弁に糸がかかり、まさに心臓に取り付ける瞬間!)

これまでに3回の心臓手術を経験されたマダムアリスさん。その3度目の心臓手術の一部始終を収めたDVDをご厚意により拝見させて頂いた。了解を頂いたので、実況中継風にその内容と私の感想をご紹介したいと思う。

マダムアリスさんは生涯3度目の心臓手術を約3年前に東京ハートセンターにて南淵先生の執刀で受けられた。南淵先生は希望する患者に本人の心臓手術の様子を記録したDVDを配ってらっしゃる。私も自分の心臓手術のDVDを頂き、宝物のように大事にしている。三つ葉葵さんと私のDVD鑑賞の記事はこちらへ。

そのDVDの映像は、皮膚にメスが入る瞬間から、最後に皮膚を縫い綴じるまでの手術の全工程なので、患者一人ひとり映像の長さは異なる。初めての開心で順調な心臓手術ならば3時間ほどで終わるようだ。だが、マダムアリスさんのDVDの記録時間は7時間を超える。過去に一度開いたことのある人の体内には癒着が発生する。再度同じ個所を開こうとすると臓器が身体の中でべったりと癒着しているので、それを慎重にはがす作業が必要だ。マダムアリスさんは再々手術なので、まずはこの癒着はがしを慎重に根気よく行わないと目標とする心臓まで到達できない。

手術台に寝ているマダムアリスさんの胸にメスを入れるところから映像がはじまる。執刀医が胸骨の位置を指で確認して切開するラインを決める。切開は縦に並行な2本線。前回の手術創上と、そのちょっと横に並行して縦方向にメスを入れる。その二つのラインの真ん中部分は切り取る。細長い長方形に切り取っている感じ。再手術だからなのか、始めての手術でもそうなのかは?

再々手術なので、前回の手術で胸骨に巻いてあるワイヤーも切除しなくてはならない。これも初めての手術なら不要な工程だ。ペンチのような器具で結構強引に回したり引っ張ったりしてワイヤーを引き抜いている。その度にマダムアリスさんの体が揺れ動く。道路工事の土木作業をイメージさせる。

初めて開胸であれば、電気ノコギリでの胸骨の切開もあっという間だが、アリスさんの場合はワイヤーを取り、癒着をはがし止血しながら、少しづつ何度も電気ノコギリを胸骨に入れて切っていた。とにかく癒着をはがすのに一苦労。少しはがしては電気メスで焼いたりロウで止血したり。

開胸器をはめたのが、メスを入れてから約40分後。しかし、そこからもまだまだ癒着との戦いが続く。心臓を囲っている心膜が心臓や周りの内臓にべたっと引っ付いてしまっている。それを少しづつ丁寧にはがして、糸で心膜を釣り上げて固定していく地道な作業が続く。

例えると、油をひいていないテフロン加工じゃないフライパンで目玉焼きを作ってしまい、それが底にべたっと引っ付いてしまったのを、黄身はつぶさずに綺麗にフライパンからはがしていくような感じだろうか?

手術開始から約2時間半。ようやく人工心肺の取り付けを開始する。人工心肺は右足の付け根から結構太い脱血管と送血管の2本の管を挿入。カテーテル検査・治療の要領で心臓まで管を到達させる。そして心筋保護液などを挿入する管は心臓に直接ズボッと挿入する。

人工心肺が稼働して、心臓を開けて中の弁の修理に取り掛かれるようになったのが手術開始から約3時間後。初めての心臓手術で順調なケースであればそろそろ手術終了となるような時間だ。それだけ再々手術は手間と時間がかかるということのようだ。

果てしなく密林が覆い被さっているジャングルの中に埋もれていた白い僧帽弁にようやく到達。まずは、前回の形成術で取り付けてあった弁輪を取り外す。そして、生体弁の適応サイズをサンプルで決定し、真っ白な生体弁に糸をかけはじめる。生体弁が縫いつけられる心臓の内側部分の直接目視できないところは、歯医者さんが使うような柄のついた小さな鏡で何度ものぞき込んでは正しい位置にちゃんと糸がかかっているか確認していた。人工弁の取り付け方が甘いと将来そこから再度血液の漏れが発生したり、血栓を生んだりしてトラブルを発生しかねない。経験ある外科医が迅速かつ慎重に縫い付ける必要がある。

絡んでしまわないのかと心配になるくらい沢山の糸が放射線状に縫い付けられていく。準備ができた生体弁を心臓に添えて、今度はそれらの糸を南淵先生が手で一本づつしっかりと結び目を何度も作りながら心臓に固定していく。

生体弁の植えつけが終わったら、今度は心房中隔欠損の再閉鎖術。白いパッチの幕を縫い付けていく。あと、記録によると左心耳閉鎖術も行われた模様。

手術開始から5時間半が経ち、内部修復した心臓の壁を縫い閉じはじめる。そして、手で心臓をモミモミしたり、ポンポンと指で叩いて、「動きなさい!起きなさい!」と丸で人工心肺に乗って昼寝していた心臓に声をかけるような調子で作業していたのが面白い。するとマダムアリスさんの心臓はそれに応えて鼓動を再開。大手術だが、心臓の動きは力強く順調に元気良く動いている。

心臓がちゃんと動いているのを確認できたら、次に、人工心肺の管を抜いて、管を刺していた穴を糸で縫っていく。大動脈から管を抜くと、一瞬、動脈血が細く勢いよくピュッと吹き出す。わざと出血させて心臓内に溜まっている気泡を抜く役目もあるらしい。外科医が指で穴を押さえながら、糸をかけて縫っていく。

水道のホースのようなドレーン2本を腹部に開けた穴から取り付ける。心臓の表面に電極のリード線も縫い受ける。これらは術後数日経って、出血や不整脈が発生せず心臓が安定したら、体外に引き抜かれることになる。

小さな出血も完全に止血を施す。出血部分が残っていないかかなり入念に確認。こうして、手術開始から6時間半で開胸器をはずし、閉胸作業に入る。心膜を閉じて、胸骨に新たなワイヤーを巻き付けてペンチで締め上げる。最後に胸の皮膚を縫い上げて、手術は終了。

執刀医の南淵先生や、交代で関わられた数人の先生たちや看護師さん、技師さんなど、スタッフの皆さんに「お疲れ様でした!」と声をかけたくなる。

この映像は単なる医学的な画像データではない。人の命の源である心臓の機能を回復させるという一大イベントを表現した映像である。手術を受けた本人にとって、自分が生きている、生きていかなくちゃいけないという、人生を後押ししてくれる、そういうお守りのようなものだ。ここに文字や言葉ではうまく表現できないし、実際に自分がそういう状況になってみなければ感じ取ることができない感動が存在すると思う。このDVDを例えば患者の家族の方が観ても、やはり本人とはとらえ方が違うはず。当事者にとっては生きることのありがたみ、生かしてもらったことへの感謝がひしひしと感じられてくるはずだ。そして、その気持ちは将来いつまでもこの映像を見る度にきっと新鮮に蘇ってくる。

久しぶりに自分の心臓手術のDVDを見直してみようと思った。

なお、マダムアリスさんの手術直後の記事はこちらへ。その後のリハビリの様子はこちらの記事へ。(ちなみにマダムアリスさんは外国の方ではなくて純粋な日本人です。いつだかそんな質問を受けたことがあったので・・・)

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第十回(元)心臓病仲間の集まり

第十回目の開催となった(元)心臓病仲間の集まり。ほぼ年に2回開催のペースで約6年続けてきた。

今回の参加者は丁度20名。ほとんどの方が、このブログを読んで私にメール連絡を下さったことから始まった繋がりでの参加。ブログを見つけて読んで下さっても、連絡を下さる方はその一部の方々であり、更にその中で実際に集まりなどでお会いして直接話をするに至る方は更にその中の極一部の方々。今回初めて来て頂いた方が5名。第三回の集まり以来、久しぶりに顔を出してくれた仲間もいた。関東圏から以外にも、大阪、山梨、新潟から移動して参加して頂いた。そして、再手術を含む術前の方も3名参加。

いつものように参加者プロフィールを配布。順番に各自の近況だったり、今回集まりに参加するまでの経緯であったり、心臓病であることが分かってから現在までの気持ちや治療による変化などを自由に紹介。自分の症状や経緯と照らし合わせての質問も飛び交う。残りの時間は各自自由なスタイルで話をしたり聴いたり・・・


(自己紹介中のTさん)

(1次会の全体風景)

集まりにやってくる(元)心臓病患者はそれなりに自分の身体や病気について勉強している方が多い。自分の命にかかわる病気のことなので必然的に経験してきたことを知識として蓄積している。患者の目から見た心臓病についての知識は、近所の町医者よりはこの集まりの参加者の方がはるかに持っているかもしれない。更に、実体験によって裏付けされた経験談は、カルテやデータから簡単に拾えるようなものではない、極めて貴重な情報だ。


(男性3人衆の創。左の晴耕雨読ぶどう園さんは小切開の手術なので創がかなり小さいですね)

まだ手術適応かどうか分からない状況だが、医者から心臓が悪いと言われて不安を抱きやって来られた参加者がいた。会場に入られて当初とても不安そうな様子をみせていらっしゃった。しかし、周りの仲間の話を聞かれて少しは安心されたのか、「彼女、段々和やかなお顔になり、笑顔が見られるようになっていましたよ。この変化を私が観ていてとても嬉しく思いました」とコメントしてくれた仲間がいる。

術前に参加してくれた仲間が術後改めて参加してくれることが多い。今回も2名いらっしゃった。これまで手術を挟んでその前後にお会いした方は例外なく、術後、丸で別人のように肌の色艶がよく、血色もよく、目が輝き、自然な笑顔で対応できるようになってらっしゃるのに驚く。手術の前後でなくとも、集まりに来て頂いただけでもご自身の何かが変化されたのであればこんな嬉しいことはないと思う。これこそ、(元)心臓病仲間の集まりの開催意義なのかなとあとから感じた。

というのも、今日の開催中に、「ん? どうも最近の集まりはマンネリ化してないか?このまま続けていいのかな」と自問自答。
帰りの電車で参加者の何人かにそっと聴いてみたところ、「続けることに意義があるんだ」と、15年以上も心臓病掲示板 たけしの部屋の管理人を続けているたけしさんに言われたり、
「このような会を取りまとめ、長く続けることは継続するだけで非常に大変なこととお察し致しますが、是非続けてください」
「今日は、ブログで写真を拝見していた方々が多くいらっしゃって、初めての感じがしませんでした」
と初参加の方から言って頂けると、マンネリでも続けなきゃなと改めて思った次第である。


(撮り忘れそうになったいつもの集合写真)

2次会は中華街のレストランへ。お酒も入り、引き続き話は盛り上がる。そして時は一瞬で過ぎ去る。

今回も買い出しや2次会の場所手配などのご協力頂いた仲間の皆さん、どうもありがとうございました。


(2次会は中華街にて。2グループに分かれて円卓を囲む)



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術後三十回目の外来



3か月毎の外来通いも今日で三十回目となった。南淵先生の初診を受けてから今日までの期間は約6年半。今日も南淵先生の外来診察をいつものように安心して終える。この三十回の外来診察で、南淵先生に会えなかったのはわずかに一回だけ。それは、南淵先生が以前の病院を退職されたと知った後、南淵先生の居ないその病院はどういう様子なのだろうかと興味を持って行ってみた時のこと。だから、この数年間、通常の外来診察は一回もすっぽかされたことがないことになる。緊急手術や処置、廊下にあふれる患者の対応で、自分の順番が来るまで果てしなく待たされることはたまにある。しかし、確実に外来アポの日に南淵先生ご本人に診て頂くことができている。術後の定期観察の(元)患者の診察でこの状況は凄くないだろうか。

葉山ハートセンターを退職された磯村先生。現在は複数の病院で外来を持たれているようだが、金曜午後は東京ハートセンターでも外来診察をされている。午前中は東京ハートセンターで執刀もされていた模様。4つある診察室の今日の3番診察室は磯村先生の外来。患者の出入りする診察室のドアが開く度に中にいらっしゃる磯村先生の様子が待合の廊下からチラチラと伺えた。磯村先生のなじみの患者さん達が多くやって来ている模様。ところが、夕方になって緊急手術が入ったとかで、磯村先生の外来診察が突然中止になるというハプニング。磯村先生に会おうと折角やってきていた外来患者を数人残したまま。その患者さん達は別の先生の診察に回されることに。状況的に仕方ないことであると十分理解できるが、磯村先生に会いに来た患者さんがとても残念そうな表情を見せていた。

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プロフィール & メール

Author: カムバックハート

カムバックハートブログバナー

カムバックハートこと、鍋島と申します。神奈川県川崎市在住の48歳男性。

2008年12月に僧帽弁形成手術を受けて、第二の人生をスタートさせることができました。

南淵先生と私

南淵先生と私(術後の初外来にて)

フィルムで写真を撮るのが趣味です。(元)心臓病仲間のポートレート写真展の開催に向けて準備中です。詳細はこちらの記事。「創と私」「術前 vs 術後比較ポートレート」「病気を支えた家族と(元)患者のツーショット」「笑顔の(元)心臓病仲間のポートレート」のテーマで作品制作中です。これから心臓手術を受けるかもしれない人達に元気になる期待と勇気を与えたいと思っています。

心臓病仲間の輪に入りたい方や、ブログについてのご質問、お問い合わせのメールはお気軽にこちらへ どうぞ。但し、私は医者やカウンセラーではないので医学的なご質問にはお答えできません。初めての方は簡単なプロフィールをお願い致します。

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ブログ開設: 2008年12月
お知らせ
このブログは、私が弁膜症の僧帽弁閉鎖不全症という病気に診断されたところから、入院、手術、退院、その後の生活という流れで時系列に記載しています。2008年12月当時の状況ですので、その後の医学の進歩で内容的に古くなっている部分があるかもしれません。実際の患者にしか分からない心理的な面の記述をできるだけ表現したつもりです。最初から読まれる場合は、「★はじまり ~こちらからご覧下さい~

コルコバード


南淵明宏先生の公式サイトにある「勇患列伝」 その7に出てくる「平松」とは私のことです。

yomiDr.のサイトにある世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ にこのブログのことを書いて頂きました。こちらの記事には第三回(元)心臓病仲間の集まりについて書いて頂きました。
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