考心会創立15周年記念講演会

術後、年2回の定期的な楽しみは考心会の講演会である。今回が4回目の参加であったが、この考心会(心臓手術後の生活を考える会)は創立15周年を迎えると知った。世の中には他の心臓病患者の会も存在するだろうし、別の病気の患者の会というのも多数存在するだろう。だけど、何かのきっかけを持って自らがその会に参加しない限り、それらの会の存在や活動を意識することはまず無いと思う。考心会は、大和成和病院と東京ハートセンター以外の病院で心臓手術を受けられた方の入会も受け付けているので、興味のある方は直接考心会事務局にコンタクトされることをお勧めする。私がなぜお勧めするかというと・・・

今回の講演会に集まった参加者は297名。私の自慢の(元)心臓病仲間達も数名、いつものように顔を合わせる。

講演は、まず南淵先生による「15周年によせて」の簡単なお話。目玉は、前回のドイツ語での見事な歌声のご披露に続いて、今回はイタリア語での美しい歌声を再び拝聴できたこと。先生、発声がいいなぁ・・・

次に、相模原協同病院心臓血管外科部長の藤崎浩行先生の「心臓手術後の生活について」のお話。藤崎先生は、以前、大和成和病院で働かれていた。先日、ICU看護師のIさんが、「あの先生(藤崎先生)が手術したら、患者さんは死なないんだぁ・・・と思った」と言っていたのが強く印象に残っていた。

「大動脈解離」は、生命を保つのに最も重要な体の芯を流れる太い血管が突然何の前触れもなく裂けだす病気。痛烈な痛みを伴い、幾層かになった血管の最後の膜がかろうじて裂けるのをこらえるのだそうだ。発症したら救急車で病院に運ばれ緊急手術。大動脈を人工血管に置き換えるとても大きな手術が必要となる。個人的にはかかりたくない病気の上位ランクだ。そうした大血管や動脈瘤の手術を得意とされている先生という事前知識を持っていた。

内容は、優等生患者と不良の患者の話、内科医は患者に説教するが、外科医は手術という最終兵器を持っているので内科医とは患者に対するアプローチが少し違いますよ、また、病気とちゃんと向かい合っている患者が強い、というような日頃の外来現場の様子を医者の視点から語られていた。

オーストラリアでは、自分が服薬している薬の種類とそれを何のために飲んでいるのか、ほぼ100%の患者が知っているそうだ。日本の場合、医者が処方した薬の名前と量、その服薬目的を聞かれてすぐに答えられる人は少ないそうだ。最近は薬の説明書が薬局でプリントアウトして配られるので内容把握も容易だが、それでも、飲んでいる薬がワーファリンなのかバッファリンなのか区別できない心臓病患者も多いらしい。

「薬は基本的に毒」だから、使い方を間違えると体に害を与える。また、健康の為には、普段から体を動かすことが大事。ただ単純にリハビリや予防を目的としての運動は長続きしないが、体を動かすことを人生の楽しみの一つにすることができれば長続きする。そのことが、筋力の衰えを抑えたり、術後の回復を早める効果がある。

人間の体には取り替え可能な部品はそんなに多くはない。脳は当然交換不可。でも、心臓の弁や大動脈血管は人工弁や人工血管でも問題ない。そういう意味で心臓はポジティブな治療が可能な完治させやすい臓器とのこと。

藤崎先生の持ち時間もあっという間に終わってしまった。

テレビで見る医療健康番組は私にとってはつまらないが、医者の生の話を聴くことは興味がつきない。

次に、記念講演。花園大学文学部国際神学科教授の佐々木閑(しずか)先生による「ブッダの教えで生きるということ」。これまでの考心会の講演は医療関係のものばかりであったが、今回は仏教のお話。これがたまらなく素晴らしかった。

人間の脳は、過去の事例や習慣を参考にして将来起こることを予測することができる。誰しも、人の人生に死が訪れることを認識している。つまり、人は死の上に立って生きている。死や病気は、各個人の人生の重荷や苦しみとなる。苦しみで押しつぶされそうになる。だけど、それらを取り除くことは不可能。なので、人は忘れるという技を使って、その苦しみから逃れようとする防衛本能を無意識に使っているが、全てを忘れ去ることはできない。

自分の心を変える努力をすることで、そうした苦しみを受け入れることができるようになる。その為にはトレーニングが必要。宗教とは、その人の人生を変えたり支えたりして死や病気といった苦しみを取り除くもの。お釈迦様は2500年前のインドで仏教を作った。当時既に存在したカースト制を不合理と考え、それに対して人は平等、あらかじめ人生というものは決めつけられているものではなく、原因と結果の上に成り立つもの。「仏教は心の病院である」と佐々木先生は仰っていた。

できたら佐々木先生の大学の講義を聴きに行きたいと思った程、印象深い講演の一つであった。

大学時代の私は、如何に授業に出席せずに単位を取得するかだけを考えていて、勉強熱心な学生ではなかったかもしれない。またいつの日か改めてキャンパスに戻って、今度は興味のある勉強を思う存分やってみたいものだと感じた。

考心会の講演の模様は、考心会のホームページの講演会のコーナーで読むことができる。今回の講演の内容も後日アップされると思うのでお楽しみに。

さて、今回の考心会は、まだ終わらない・・・

休憩を挟んで、アルパ奏者の上松(あげまつ)美香さんのコンサートが1時間続く。アルパは南米パラグアイの楽器。ハープと同類のもの。ラテンアメリカ好きの私はアルパという楽器は昔から知っていたが、その生の音を聴いたのは初めて。アルパには楽譜が無いらしい。師匠の演奏を見て聞いて、体で弾き方を覚えるのだそうだ。ギター奏者の藤間仁さんも共演。お二人のラテン民族衣装がお似合い。曲の間にチラッと仰ったのだが、お二人はご夫婦とのこと。う~ん、その発言を残念に思った(元)心臓病患者ファンは多いはず!

素晴らしい音楽を演奏して下さった上松美香さんと藤間仁さん



考心会発行の書籍「心臓病との闘い2 再発にそなえて」と、南淵先生の最新著書「異端のメス」が本日の参加者全員に授与された。まだ全部読んでいないが、「心臓病との闘い2 再発にそなえて」は、心臓手術を経験した方にはバイブルと言っても良い書籍かもしれない。機能修復すれば健常な心臓に戻すことができる。再発についての意識を継続するが故に、その後の人生は気丈であり、結果的に天寿を全うすることもできるのだと再認識させられた。本の中に書かれた南淵先生の文章もYomi Dr.に書かれていた症例のお話からはじまり、最近感じられているのであろう「魂」のお話にも感激を受けてしまった。心臓病経験者を鼓舞する多くの言葉が盛り込まれたお勧めの一冊だ。お求めは考心会事務局へどうぞ。

今日は、「心」への刺激を沢山受けた充実的な一日であった。

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その後のことをもう少し追加・・・
この週末に「心臓病との闘い2 再発にそなえて」を全部読んだ。心臓手術体験者の方々の術後の生活について書かれた文章は、各自が授かった術後の貴重な人生を大切に着実に生きておられえるその様がとてもリアルに伝わってくる。そして、皆さん例外なく、病気を前向きに受け入れている。同じ心臓手術体験仲間としてものすごい共感を感じることができた。そして、南淵先生、藤崎先生、白石先生、徳田さんの文章が続き、最後に、何よりも深津さんの文章を読んでこれまた感激してしまった。いつも病院で患者に対して優しく接してくれる深津さん。深津さんのお考えやお言葉を長い文章で拝読したのは今回初めてだ。患者への的確なアドバイス、そして、ご自身の生き方にも触れたお言葉。やはり、この一冊は心臓手術経験者のバイブルとなりうると思う。

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大動脈解離

ご無沙汰してます。
ブログは拝見しています。大動脈解離、本当に凄い病気です。
実は、父(79)が急性大動脈解離から、解離性大動脈瘤になりました。1回目の解離の時、脳梗塞にもなってしまい、大動脈瘤の手術は、心臓だけを考えた場合は、問題ないが、脳梗塞のため合併症のリスクが高く、また、高齢なので手術はしない方向になりました。(先生は、ベストな選択と言われましたが…)
心臓手術経験者としては、手術自体には、不安はないのですが、高齢や他の病気を考えた場合、仕方ないと思っています?
病気はいつ襲ってくるか、わかりませんが、現実をみるしかないのですね。
済みません、今回は、私の愚痴でした。

こんにちは。

みゆさん、こんにちは。

以前からずっとブログを読んでくれている方から、たまにコメントを頂くと嬉しいです。

お父様、、、そうなんですか。確かに合併症のリスクは怖いですね。先生がベストの選択と
仰ったのを信じるべきなのか、それとも、別の選択肢も模索するべきなのか・・・
医療に素人の僕には判断できませんが・・・

手術の選択

早速の返信ありがとうございます。
何が良いのか、本当にわからないです。
父も手術を受ける気でいたのですが、先生に説得されたような形です。とりあえず、リハビリを行い、のんびりとした生活を過ごすようになるのかもしれません。
世の中には、色々な病気があるものだと、改めて思いました。
ブログ楽しみにしています。仙台在住ですが、たまに、参加させて下さい。
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Author: カムバックハート

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カムバックハートこと、鍋島と申します。神奈川県川崎市在住の49歳男性。

2008年12月に僧帽弁形成手術を受けて、第二の人生をスタートさせることができました。

南淵先生と私

南淵先生と私(術後の初外来にて)

フィルムで写真を撮るのが趣味です。(元)心臓病仲間のポートレート写真展の開催に向けて準備中です。詳細はこちらの記事。「創と私」「術前 vs 術後比較ポートレート」「病気を支えた家族と(元)患者のツーショット」「笑顔の(元)心臓病仲間のポートレート」のテーマで作品制作中です。これから心臓手術を受けるかもしれない人達に元気になる期待と勇気を与えたいと思っています。

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ブログ開設: 2008年12月
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このブログは、私が弁膜症の僧帽弁閉鎖不全症という病気に診断されたところから、入院、手術、退院、その後の生活という流れで時系列に記載しています。2008年12月当時の状況ですので、その後の医学の進歩で内容的に古くなっている部分があるかもしれません。実際の患者にしか分からない心理的な面の記述をできるだけ表現したつもりです。最初から読まれる場合は、「★はじまり ~こちらからご覧下さい~

コルコバード


南淵明宏先生の公式サイトにある「勇患列伝」 その7に出てくる「平松」とは私のことです。

yomiDr.のサイトにある世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ にこのブログのことを書いて頂きました。こちらの記事には第三回(元)心臓病仲間の集まりについて書いて頂きました。
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