入院六日目(手術前日)

手術二日前の昨日、麻酔科の先生から全身麻酔について説明を受ける。「手術中は絶対に痛くないし、知らない間に全部終わりますから何も心配いりませんよ」とのこと。イケメン系のテレビドラマに出てきそうな先生であった。

そうして、手術前日。この日は少々慌ただしい。

まず、剃毛、臍処置(へその掃除)、腹囲測定、爪切りを済ませて、シャワーで、頭のてっぺんから足の指先まで丁寧に洗う。そして、タンがでやすくなるように10分間の吸入(霧状の薬を吸う)を二回行う。

心臓の手術なので、剃毛する部分は胸毛だけかと思っていた。しかし、胸毛の他にも、脇毛、腕の毛、脚の毛、それから、あそのこ毛も剃らなくてはならないらしい。なんでも、手術の状況に応じて、脚から血管を採取したり、脚の付け根の部分から人工心肺の管を入れる可能性もある為だそうだ。毛を剃ることによって、バイ菌が付きにくくなるし、また、テープをはがす時も痛くないらしい。

病室の自分のベッドの周りのカーテンを閉め、床にタオルを敷いて、まずは自分で電動バリカン(本体は病院が貸してくれる。刃は売店で購入。)を用いて剃り始める。髪の毛を除く全身の毛を剃っていくのだが、毛深い私は大変・・・羊の毛を刈っているような感じ。自分で剃りにくい体の後ろの部分や脇の下は、看護師さんが丁寧に手伝ってくれたが、やはり、少々恥ずかしいものである。

剃り終わったら、シャワー室へ。そこの鏡で見ると、おしりの下のあたりにまだ毛が残っているではないか。慌てて看護師さんに、「剃り残しがありました!バリカン貸して!」と伝える。看護師さんがシャワー室にやってきて、全裸の私に、「あら!ゴメンナサイ。ちゃんと確認しなくて」と言って、剃り残しを剃ってくれたのである。

午後は、手術後に入るICU(集中治療室)の看護師さんから説明を受ける。パンフレットを元に、ICUとはどんなところ?、手術後の体の状態は?、麻酔から目が覚めた時の状態は?、自分で呼吸できるようになったら、リハビリ、などについて教えてもらう。

ICUの看護師さんの制服は、一般病棟の看護師さんとはちょっと違う。なんかアロハシャツっぽいような、さわやかなシャツ姿。なぜだろう?

ICUでの家族面談は、一回5~10分程度と限られており、また、12歳以下の子供さんはご遠慮下さいとのこと。確かに、体に管を何本も差し込まれたお父さんの姿を小さな子供が見たら、ショックを受けるかもしれない。

その後、ナースステーション脇の部屋で家族と一緒に、南淵先生から手術についての説明を受ける。所謂、インフォームド・コンセント。川崎市立病院でのエコー検査結果では、前尖逸脱でLV拡大と診断されていたが、南淵先生曰く、僧帽弁の恐らく後尖側にたゆみができていて、その部分がちゃんと閉まらなくなり血液が逆流している模様とのこと。たゆみを切って、半円状のリングを後尖側に縫い付けるのだそうだ。後尖より前尖側の方が治療が難しいと聞いていたので、処置すべきは後尖側であろうと知って少し安心した。

そもそも、エコーに心電図、レントゲン、CT、MRIにせよ、全てに完璧な検査はないらしい。それぞれの検査方法によって良く分かることとそうでないことがあるので、複数の検査を実施して、さまざまな検査結果から多面的に判断して、一番確率の高い症状や病気の状態を推測するイメージらしい。

逆流のレベルは、エコー検査による判断では4段階のレベル4。これ以上逆流が酷くなると心臓が止まっちゃうかも・・・形成術で治せると思うが、うまくいかなければ弁置換の可能性もあるとのこと。胸を開けて実際に心臓を見てみないと、どのような戦術を使って病気という敵と戦うかは最終的に決められないとのこと。南淵先生曰く、「僕は、この手術は楽勝だと思ってますけどね!」 

エコー検査の画像を備え付けのパソコンの画面に出してもらい、デジカメの動画で保存しておいた。手術後のエコーと比べてみれば、手術による治療の成果が分かると思った。と同時に、「私はしっかりチェックしてますから、ちゃんと手術やって下さいね!」という、失礼ながら、ささやかなプレッシャーを南淵先生に与えたつもりだった。

エコー画像

「心臓弁手術内容説明用紙ならびに手術依頼書」(どのような内容の手術を予定しているか説明した書類)、輸血同意書などの説明を受けて、納得の上、サインする。

機械弁と保存液に浸された生体弁のサンプルは説明部屋においてあり、手に取って見てみた。「もし弁形成術がうまくいかない場合は機械弁を用いた人工弁置換を行う可能性があります」と上述の依頼書に記載がある。生体弁は、15-20年しか耐用性がなく、又、年齢が若く新陳代謝が大きい程耐用年数が減るので、私の年齢では本人からの特別な希望がなければ機械弁の選択が妥当だと思われる。

ちなみに、私の入院前に退院していった26歳の男性患者さんは、術後のワーファリン服用の制限のない生活を希望された為、生体弁での手術を受けられたそうである。近い将来の再手術を覚悟した上で・・・

又、81歳の患者さんで、術前に99%生体弁での弁置換になると言われていたのが、胸を開けて心臓を見てみたら、弁自体の状態が良かったので、形成術で済んだという方もいらっしゃった。

手術室に向かった後、ICU滞在時は、それまで居た一般病棟のベッドを空けなくてはならない。ICUに持っていける荷物は限られていて、歯磨きセット、腹帯、ハートハガー(術後の胸の痛みをやわらげるアイテム)、スリッパ、ティッシュボックスなど。全てシールで名札付けをする。その他の入院時に持ち込んだ荷物は病院の倉庫預かりにしてもらうためにまとめて鞄に整理する。

夕食は6時に普通に食べる。お腹に残りにくい柔らかい食事であった。

家族や友人に、「いよいよ明日、手術だよ」と携帯メールする。すぐにはげましの返事が返ってきてうれしい。夜勤の看護師Kさんや、デイルームに集まる術後の先輩方々からも、不安を取り除く色々なお話をして頂いた。もう、この時点では、不安も恐怖も全く感じていなかった。来るべき時が来るのをただ待つだけという感覚・・・

手術前日の夜は緊張する人が多いのか、眠剤を飲まされる。あと、翌朝、便がちゃんと出るように下剤も飲んで、床に就く。手術開始は明日の朝9時・・・

大和成和
大和成和病院 2階病棟廊下にて (TC-1 + Tri-X 400)

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Author: カムバックハート

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カムバックハートこと、鍋島と申します。神奈川県川崎市在住の48歳男性。

2008年12月に僧帽弁形成手術を受けて、第二の人生をスタートさせることができました。

南淵先生と私

南淵先生と私(術後の初外来にて)

フィルムで写真を撮るのが趣味です。(元)心臓病仲間のポートレート写真展の開催に向けて準備中です。詳細はこちらの記事。「創と私」「術前 vs 術後比較ポートレート」「病気を支えた家族と(元)患者のツーショット」「笑顔の(元)心臓病仲間のポートレート」のテーマで作品制作中です。これから心臓手術を受けるかもしれない人達に元気になる期待と勇気を与えたいと思っています。

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このブログは、私が弁膜症の僧帽弁閉鎖不全症という病気に診断されたところから、入院、手術、退院、その後の生活という流れで時系列に記載しています。2008年12月当時の状況ですので、その後の医学の進歩で内容的に古くなっている部分があるかもしれません。実際の患者にしか分からない心理的な面の記述をできるだけ表現したつもりです。最初から読まれる場合は、「★はじまり ~こちらからご覧下さい~

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南淵明宏先生の公式サイトにある「勇患列伝」 その7に出てくる「平松」とは私のことです。

yomiDr.のサイトにある世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ にこのブログのことを書いて頂きました。こちらの記事には第三回(元)心臓病仲間の集まりについて書いて頂きました。
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