マダムアリスさんと姫野さんの手術

とある金曜日の午後、大崎病院東京ハートセンターの南淵先生の初診。我らが(元)心臓病仲間のマダムアリスさんにゆくりなくも再々手術適応の宣言がなされた。因果を含めるような宣告ではなく、あくまでも再手術を強くお勧めしますとの説明であったと推測する。初診診察日から3日後の翌週月曜日に入院、そして木曜日に手術でスケジュールが決まる。それはいつかはやって来るとご本人にも分かっていた3度目の心臓手術(一度目は33年前の先天性心房中隔欠損症の手術、二度目は3年前の僧帽弁形成術)。だが、誰しもこんなに早くその日がやってくるとは思っていなかったはず。

金曜日の外来後、診察結果を伝えるメールがマダムアリスさんから私宛に届いた。突然の内容に私も驚く。直ぐに電話せずにいられずかけるが話し中。三つ葉葵さんと先に電話で話をしていた模様。暫くしてリダイヤル。繋がった電話の先のマダムアリスさんは、きっと度を失いすっかり落ち込んでいるのではないかと思いきやいつもと同じ明るい調子の声が返ってきた。本人に手術を受けることへの迷いもなく、執刀医の南淵先生に対する信頼もできあがっているのを感じたから、これは何も心配要らないなと直感で分かった。

翌日、土曜日。やはり術前に会いたいと思い、三つ葉葵さんと二人でマダムアリスさんを訪ねる。ビジネス街のショッピングモールでランチブフェ。「入院したら暫くお酒飲めないから、今日はビールで乾杯しておく?」という冗談も・・・マダムアリスさんの術前のポートレート写真を撮る。術前に抱えている患者の不安と期待の心情が無意識に写り込んでいるはずだ。この写真を術後の写真と対比させて眺めることで、「自分ってこんなに見違えるように元気になったんだなぁ。心臓手術を受けて本当に良かったなぁ」と思ってもらえると思う。

月曜日に入院。都心にある大崎病院東京ハートセンターなので検査室も病棟もこじんまりとした感じだが、その分機能的でまた随所に大きな窓があるので圧迫感は思った程感じさせない。

入院後の検査は、心臓カテーテル、胸部CT、血液、尿、頸動脈エコー、頭部CT、ABI/PWV とのこと。検査の様子や先生とのインフォームドコンセントの状況、ご家族の様子など、入院後もまめにメール連絡が来る。手術を迎えるまでのマダムアリスさんはやはりいつもと同じく明るくて患者としての強さを発信していた。

木曜日。その日二番手の手術。昼頃、そろそろ麻酔かけたかな・・・そろそろ癒着もはがして南淵先生が生体弁置換している頃かな・・・ICU入ったかな・・・目が覚めたかな??と、頭に手術の様子を思い描く。

21:19。突然、スマホが振動・・・差出人マダムアリスのメールが一通!えぇ~ありえない!記録だ!これまでに手術当日ICUから連絡をくれた仲間はいない、と思ったが、実は、お嬢さんの代筆で無事手術が終わった旨の連絡を送って頂いたのだった。流石に手術当日に本人がメールは打てない。

我らの最も大事な(元)心臓病仲間の一人であるマダムアリスさん。南淵先生には我々カムバックハート仲間からの暗黙のプレッシャーがかかっていたと想像するのだが仲間の手術を見事に終えてくれた。

手術翌日の金曜日。三つ葉葵さんがたとえ会えなくてもよいからと大崎病院東京ハートセンターに向かう。受付でICU滞在中のマダムアリスさんに会いたいと伝えると、マダムアリスさんからも三つ葉葵さんは家族同然ということで配慮がありICUへの入室を許可され会うことができたとのこと。既にベッドで起き上がって、血色も良くて入院2日前に会った時よりも元気そうだったとのこと。持ち前の明るさでICUでも人気者になっていたようだ。


手術翌日、ICUにて(三つ葉葵さん撮影)


ドレーン、ICUにて(三つ葉葵さん撮影)

その週の日曜日は、第四回(元)心臓病仲間の集まりを開催した日。もちろんマダムアリスさんも参加予定だったが残念ながら欠席。いや、本当は、南淵先生もICU看護師の伊崎さんもリハビリ室の徳田先生も集まりに居た訳だから、外出許可をもらって点滴をかついで救急車で会場に登場できたのかもしれない(笑)

手術翌週の土曜日、午後2時。(元)心臓病仲間数人でお見舞いに行く。3Fリハビリ室で丁度心臓リハビリの最中。大きなボールを壁にそって動かす運動や自転車漕ぎ(23分間)。最後に心臓リハビリ卒業証書を皆の前で授与され涙するマダムアリスさん。

その後、4Fのデイルームに移動し、マダムアリスさんと同じ日に南淵先生の手術を受けられた姫野さんも交えてお話する。姫野さんは僧帽弁形成術を受けられた若手。術前にこのブログにコメントを頂いていた。その日はお二人共、術後9日目。術後の人生のありがたさがひしひしと伝わってくるお二人の言葉の数々。そして、お二人揃って、翌日、術後10日目での退院が決まったとのこと。極めて順調な術後経過だと思う。姫野さんとマダムアリスさんは同じ手術日に同じ執刀医の手術を受けたことで親近感も深まり、まるで姉弟のようだ。

無事に退院された後、最初の週のお二人のご様子は次の通り。

マダムアリスさんは、これまで動悸があるのが普通の生活だったけど、心臓がトックントックンととても静かになったとのこと。開胸した創の痛みと筋肉痛があるが心臓はすっかり楽になり、前回の僧帽弁形成術の時の術後の経過とも大違いに良いらしい。リビングに置かれたソファーベッドで、ペットのワンちゃん達に包囲されて療養中。家事もボチボチとやりながら、リハビリメニューを適度にこなしたりさぼったりして今月は静かに過ごしますとのこと。

姫野さんは、ラーメンの美味しい匂いに誘われて食べてしまうけど汁は残す、お酒は飲む量をあらかじめ決めておくなど、俗世の甘い誘惑とうまく折り合いを付けて自己管理されているご様子。東京ハートセンターについても、「病院と言うより母校のような感覚です。退院時の忘れものを取りに今日4階病棟へ行くのですが職員室に行く様な気分で緊張してます(笑)」とのこと。


術後4日目一般病棟にて(マダムアリスさん提供写真)


術後9日目のマダムアリスさんと姫野さんを訪ねて、デイルームにて

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こんにちは 退院してからそろそろ 1週間経ちます。 

今日は 気胸の経過を見に病院へ。問題無しの太鼓判。 

気になっている 創のグズグズの傷後 とりあえず完治まで2週間かかるとの事です。

帰りは リハビリの先生に教えてもらった 武蔵新田のラーメン屋へ(もちろんスープは残しましたよ)食後の運動がてら、、、池上本門寺を散歩しに。

住んでる場所柄 此方の付近には来ないので 次も 大森、蒲田付近を散歩しようかと思ってます。(勿論 ハートセンターの皆さんにお勧めの料理屋を聞いてから)

健康と欲望の折り合いをつけつつ 病気と闘わず仲良くしながら 生活して行こうかと思います。


おめでとう

マダムアリスさん&姫野さん おめでとうございます。徐々に助走から全力疾走へとギヤチェンジして下さい。まだ若いです。
カンバックハートさん。TVの現場実況のようなブログは体験者として頭に、心にデティ―ルが描写されたようでした。マダムアリスさん3回目心臓本体にメスが入りしかも快調に回復の様子、還暦への階段を力強く踏み込めますね。
わたしは3/4の弁を置換、補修しているので3回目は???細胞シートを培養して心臓に張り冠動脈を再生する医術。それとも心臓移植かなと---思っています。10年後の現実かもしれません。甦った命を大切にして存在感のある爺さまで生きるつもりです。

No title

たかしげさん はじめまして。

退院後は弁膜症を通じて色々な方々と交流出来る楽しみも増え、
入院前の弁膜症のネガティブなイメージは随分と無くなりました。

集まりがある際は 参加したいと思ってます。
会える日を楽しみにしています!

No title

三度目の手術を決断されたマダムアリスさんの勇気と,明るく前向きな姿勢に頭が下がりました。同時に私もたくさん,元気をいただきました。

同じような病気をかかえている人間にとって,何よりも力強い励ましのメッセージになったと思います。

姫野さんもお元気そうで良かった!


あわせてこのような記事をブログにて発信して下さったカムバックハートさまにも感謝です。
ありがとうございました。
プロフィール & メール

Author: カムバックハート

カムバックハートブログバナー

カムバックハートこと、鍋島と申します。神奈川県川崎市在住の48歳男性。

2008年12月に僧帽弁形成手術を受けて、第二の人生をスタートさせることができました。

南淵先生と私

南淵先生と私(術後の初外来にて)

フィルムで写真を撮るのが趣味です。(元)心臓病仲間のポートレート写真展の開催に向けて準備中です。詳細はこちらの記事。「創と私」「術前 vs 術後比較ポートレート」「病気を支えた家族と(元)患者のツーショット」「笑顔の(元)心臓病仲間のポートレート」のテーマで作品制作中です。これから心臓手術を受けるかもしれない人達に元気になる期待と勇気を与えたいと思っています。

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ブログ開設: 2008年12月
お知らせ
南淵明宏先生の公式サイトにある「勇患列伝」 その7に出てくる「平松」とは私のことです。

yomiDr.のサイトにある世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ にこのブログのことを書いて頂きました。こちらの記事には第三回(元)心臓病仲間の集まりについて書いて頂きました。

このブログは、私が弁膜症の僧帽弁閉鎖不全症という病気に診断されたところから、入院、手術、退院、その後の生活という流れで時系列に記載しています。2008年12月当時の状況ですので、その後の医学の進歩で内容的に古くなっている部分があるかもしれません。実際の患者にしか分からない心理的な面の記述をできるだけ表現したつもりです。最初から読まれる場合は、「★はじまり ~こちらからご覧下さい~

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