お勧めの一冊 「受ける?受けない?冠状動脈バイパス手術」 

「受ける?受けない?冠状動脈バイパス手術 ~読んでみてから判断しよう」

南淵先生の著書ではあるが、バイパス手術の本なのでなんとなく読むのを後回しにしていた。勤め先の近くにある図書館に蔵書があるのを知り、直ぐに予約して手元に・・・

「しまった!もっと早く読んでおけば良かった!」と思った。

心臓の基本的な構造、狭心症、心筋梗塞といった病気と症状についての知識、カテーテル治療かバイパス手術かの適応の判断基準から、手術の手順、ICUの詳細、術後の経過、各種合併症のリスク、リハビリや術後の生活について、手術の費用や、医師への謝礼について、創の痛みや食事、抜歯についてなど、実際に心臓手術を受ける患者にとって実践的で有効な情報が分かりやすく解説されている。

弁膜症手術は心臓の中の弁を修理する訳だから人工心肺を使用して一時的に心臓を止めることは必至。人工心肺を使わないオフポンプのバイパス手術が世の中に広まりだし南淵先生も症例を重ねつつある頃に書かれた本だが、当時はバイパス手術でも人工心肺を使った手術が多かった。人工心肺を使うのあれば、手術の手順などはバイパス手術も弁手術も大枠は同じなので、この本に書いていあるほとんどの内容がバイパス・弁を問わず心臓手術を受ける方どなたにも参考になる情報だと思う。

特に、術後患者をICUでどのようにケアするのか、どのようなモニターに繋がれていて、それぞれがどのような体の状態をリアルタイムに表現しているのかを詳しく知ることができて興味深かった。心電図、動脈血圧、肺動脈圧、O2(酸素)飽和度、心拍出量、気道内圧、呼吸している空気の量、吸気ガスの分圧などなど。そして血液検査や尿の出具合で状態をどのように判断するのか解説してある。どこまで自身の呼吸力が回復すれば人工呼吸器の管が抜けるのかも分かる。心臓手術体験仲間の談として、この気管内チューブの管だけは意識が戻るとかなり辛いので目が覚めたらできるだけ早く抜いてもらいたいものらしい。と言うのも、私の場合はまだ麻酔から覚めたのかどうかも分からないくらい早い時期に抜いてもらえたのでその苦しみが分からなかったのだ。

多くの心臓病患者が元々持っている糖尿病などの別の病気との関係や、術後起こりうる脳梗塞や心不全などの重い合併症から、気胸、胸水といったよくある合併症、そして誰でも多かれ少なかれ必ず発生するらしい不整脈まで。読み進めるうちに、心臓手術にはこのような危険なリスクが沢山あるのかと怖くなる方もいるかもしれない。だけど、これらのリスクを知らずに手術を受ける方が今の私にとってはよっぽど怖い。リスクを知って、そのリスクを理解し受け入れる。この段階で不安は無くなってくるはず。そして、自らが信頼できる病院と執刀医の手による手術を受けることを自己決定するのが大事だ。

「手術の前日、緊張して眠れない場合は睡眠薬をもらって下さい」と書いてある。仮に患者が一睡もできなくても手術には一切影響ないそうだ。もっとも私の知る限り、手術前日に緊張と不安で眠ることができなかったという人は一人もいない。皆さん、それまでに不安は解消し、来るべきイベントの日に備えて気持ちを落ち着かせることが結果的にできてしまうようである。私もまさにその通りであった。

漫画家でもあり産婦人科医でもある茨木保先生のマンガ・イラストが随所に盛り込まれていて楽しい。ICUで術後の患者が各種の管に繋がれてベッドに寝ているイラストがなかなか良い感じ。「実践 人工心肺」「ナースのちから (CABG手術編)」にも茨木先生のマンガが載っている。



この本は、南淵先生が40歳の時の著書。たまたまそれは私が心臓手術を受けた時の年齢と同じだ。

南淵先生の他の著書には書かれていない内容も多い。南淵著書コレクションがまた一冊、私の2畳半の書斎の本棚にやってきた。既に絶版だがアマゾンで中古本として手に入るので機会があれば読んで頂きたいお勧めの一冊として紹介させて頂いた。

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この本を読んだ後、続けて別の心臓外科の先生が心臓病について書かれた本を何冊か読んでみた。患者向けに心臓のこと、病気のことをイラストを用いてとても分かりやすく解説してあるのだが、どこか教科書的で面白くない。心臓病を既に患って、それなりに知識を得た(元)患者達にとっては僭越ながらその内容は容易に感じられる。実際の患者の体験談も多々引用されているのだが、不思議と親近感がわかないのはなぜだろう。

そういう意味で、南淵先生の本は全てがそうだとは言わないが、ただの教科書や参考書的ではない、推理小説や恋愛小説的な面白さがあるような気がするのは私だけの感想だろうか。

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Author: カムバックハート

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カムバックハートこと、鍋島と申します。神奈川県川崎市在住の48歳男性。

2008年12月に僧帽弁形成手術を受けて、第二の人生をスタートさせることができました。

南淵先生と私

南淵先生と私(術後の初外来にて)

フィルムで写真を撮るのが趣味です。(元)心臓病仲間のポートレート写真展の開催に向けて準備中です。詳細はこちらの記事。「創と私」「術前 vs 術後比較ポートレート」「病気を支えた家族と(元)患者のツーショット」「笑顔の(元)心臓病仲間のポートレート」のテーマで作品制作中です。これから心臓手術を受けるかもしれない人達に元気になる期待と勇気を与えたいと思っています。

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南淵明宏先生の公式サイトにある「勇患列伝」 その7に出てくる「平松」とは私のことです。

yomiDr.のサイトにある世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ にこのブログのことを書いて頂きました。こちらの記事には第三回(元)心臓病仲間の集まりについて書いて頂きました。

このブログは、私が弁膜症の僧帽弁閉鎖不全症という病気に診断されたところから、入院、手術、退院、その後の生活という流れで時系列に記載しています。2008年12月当時の状況ですので、その後の医学の進歩で内容的に古くなっている部分があるかもしれません。実際の患者にしか分からない心理的な面の記述をできるだけ表現したつもりです。最初から読まれる場合は、「★はじまり ~こちらからご覧下さい~

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