たかしげさんからの投稿 「小さな折り鶴」

たかしげさんの心臓手術の入院中とその後の出来事を綴った文章を頂きました。心臓手術という一大イベントを経験するにあたっては、この文章に書かれているような、ふっと流れて忘れてしまいそうな出来事にも敏感に感じることができるようになるのでしょう。その結果、そうしたことが患者や家族の大切な記憶となって心に残るのかもしれません。

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(撮影;たかしげさん)

再度の心臓手術を宣告され話す言葉は力なく,荒く吐く息で家内に付き添われて病院のベッドにやっと身体を横たえた。隣のベッドには初老の男性が横になっていて挨拶したが病人特有のひげが伸びているので歳は分からない。力なく応えてくれた。 

患者さんは東さんと云う方だった。日曜日になるとお孫さん達を連れてご家族がお見舞いに来られ賑やかだった。微笑ましい雰囲気に不安で落ち着かない心が癒された。

帰り際に小学4年くらいの女の子が見知らないお爺さん(私)に仰ぎ見るようにしてかわいい手の掌に小さな空色の折り鶴をのせて「オジさんこれ、早く好くなってください」とプレゼントしてくれた。うちの孫は高校生だ。優しい言葉はかけてくれるがこの雰囲気にはなじめない齢(とし)となっている。

帰りに東さんの奥さんが挨拶された。病床にある主人は癌を患っていて余命わずかと告げられているらしい。折り鶴のお礼を云って別れた。

13時間余の手術が終わり成功してICUから部屋を替えて個室に戻った。
折り鶴はどこ?と娘に聞いた。ポンプヘッド後遺症も無く折り鶴を覚えていたのだ。
娘は小指の先のような折り鶴を抽斗(ひきだし)からだして見せてくれた。 
あの子からのプレゼントの折り鶴が手術成功を運んできてくれたのかもしれない。一瞬胸にこみ上げてきた。喜怒哀楽の情が失せ始めた爺には珍しい感動だった。

順調に回復している頃、東さん家族とお会いした。
「退院おめでとうございます」とお祝いを述べた途端「最後は家で家族に囲まれて終わらせたいから・・・65才です」と 奥さんの口から洩れるように聞こえた。折り鶴のお礼もして後ろ姿を見送った。

病院内の患者間のひと時の交流と受け止めて一年が過ぎ去った。

ぺ―スメーカでバージョンアップした心臓を抱えながらも暑さの猛威にもへこたれることなく過していた。突然チャイムとともに映った見知らぬ女性に「あずまです」の言葉に一気に入院生活の記憶が甦って来た。手には見たことがある“配食時付いてくる注意書きの紙片が握られていた。互いに交換したアドレスメモを思い出した。遠く金沢区から訪ねてくれたのだ。私の健康を喜んでいただいたが反面、ご退院後間もなくかわいい鶴を折ってくれたお孫さんたちが涙ながらに手を握り黄泉のくにへ旅立たれたと話された。

癌の執拗な脅威に比べ多くの人工物を埋め込まれても健常者並みに暮らせる有難さに感謝している。

    「たかしげ」      2012-9-24
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Author: カムバックハート

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カムバックハートこと、鍋島と申します。神奈川県川崎市在住の48歳男性。

2008年12月に僧帽弁形成手術を受けて、第二の人生をスタートさせることができました。

南淵先生と私

南淵先生と私(術後の初外来にて)

フィルムで写真を撮るのが趣味です。(元)心臓病仲間のポートレート写真展の開催に向けて準備中です。詳細はこちらの記事。「創と私」「術前 vs 術後比較ポートレート」「病気を支えた家族と(元)患者のツーショット」「笑顔の(元)心臓病仲間のポートレート」のテーマで作品制作中です。これから心臓手術を受けるかもしれない人達に元気になる期待と勇気を与えたいと思っています。

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南淵明宏先生の公式サイトにある「勇患列伝」 その7に出てくる「平松」とは私のことです。

yomiDr.のサイトにある世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ にこのブログのことを書いて頂きました。こちらの記事には第三回(元)心臓病仲間の集まりについて書いて頂きました。

このブログは、私が弁膜症の僧帽弁閉鎖不全症という病気に診断されたところから、入院、手術、退院、その後の生活という流れで時系列に記載しています。2008年12月当時の状況ですので、その後の医学の進歩で内容的に古くなっている部分があるかもしれません。実際の患者にしか分からない心理的な面の記述をできるだけ表現したつもりです。最初から読まれる場合は、「★はじまり ~こちらからご覧下さい~

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