考心会 平成27年度講演会

考心会の秋の講演会が相模大野で開催された。年二回の考心会の集まりは、神奈川県大和市の鶴間か相模原市の相模大野のどちらかの会場で開催されることが多い。そして、相模大野で開催される日は何故か悪天候になることが多い。

参加者は約170名。今日の講演は、①南淵明宏先生の近況あれこれ、②大和成和病院心臓血管外科副部長の深田靖久先生の「最近の心臓血管外科手術とその安全性」、休憩を挟んで、患者同士のグループ討議と南淵先生への質問という内容であった。



南淵先生の講演は、東京ハートセンターから昭和大学横浜市北部病院への勤務先変更の話から始まったが、それ自体は一言でいうなら「流れ」であり、今は毎日楽しくネクタイを締めて大学教授として大学病院に通勤されているとのこと。昭和大学へは、深津さん、奥山先生と中川先生も東京ハートセンターから移られたとのこと。病院を移ったと言っても、それは芸能人が所属事務所を変えたのと同じようなレベルの話であり、心臓手術をやっていくことには変わりはないということで、話は次のテーマへ。5~10年前に比べると今の救急医療のレベルは大きく向上しているそうだ。行政がそのように世の中の医療制度を良い方向に改革し成果を出している面がある一方、今の医療が進んでいる方向が決して良い向きだけではないという話も。具体的に言うと、病院には医者の数やベッドの数、廊下の広さまでといった様々な制約が行政から果たされ、そうした基準で選ばれた病院にしか患者の望む医療を行うことが実質できなくしていくような方向性もある。その制約の中には、本来医者が持つ患者を治したいという本質的なモチベーションは含まれていないという課題。

大和成和病院の深田先生の講演は、1953年に世の中で初めて成功した心臓手術の歴史から始まり、70年代に入って心筋保護液の開発が進んだことで心臓手術は安全性を徐々に上げてきたとのこと。近年はステントの性能向上によりバイパス手術は件数自体は減ってきているが、一度に4本か5本といった本数のバイパスを繋ぐケースが多いらしい。代わりに徐々に件数が増えてきているのが弁膜症手術。虚血性心疾患の手術成功率は99.5%、弁膜症手術の成功率は98%というのが一般的な平均値らしい。また心臓手術全般において、待機手術であればリスクは1.7%程だが、緊急手術だと21.8%になるというデータも紹介されていた。そして、大動脈弁狭窄症で手術をした場合としなかった場合での5年生存率が5割も違う結果がレポートとして上がっていたのが驚きだった。最後は、心臓外科手術の最新技術のご紹介。ステントグラフトによる人工血管手術や創口の小さい小切開手術。そして、経カテーテル的大動脈弁留置術という開胸せずに大動脈弁をカテーテルで植えつける手術は近年注目されているらしく、日本でも2013年から保険適応になったとのこと。但し、基本は胸を切開して確実に人工弁を植え付けることが大事で、年齢や他の合併症の関係で止む無く開胸できないようなケースで初めてカテーテルでの人工弁手術は行われているのが現状とのこと。しかしひょっとしたら、医学の進歩で、人工弁はカテーテルで植えつけるのがこの先常識になっている時代がやってくるかもしれない。手術動画とアニメーションを多用してのプレゼンテーションはとても理解しやすかった。講演の最後に、術式の名前では一般人にも一番知られているのではないかと思われるバチスタ手術の実際の手術動画を見せて頂いた。拡張した心筋を切り取り縫い合わせるだけの技術的にはそれほど難しい手術ではないとのこと。実は、海外では心臓移植による対応の方が予後が良いとかで現在はバチスタ手術はそれほど盛んにおこなわれていないそうだ。国内では心臓移植がまだまだ制約が有り過ぎるのでこうした手術も有効であるとのこと。





さて、次はグループ討議。10人ほどのグループ毎に、「手術後の不安・悩み・薬等」というテーマで話し合いを行う。

討論が始まって心の中で思ったのだが、手術後の不安って本当にあるのだろうか。不安は先が見えなかったり分からないから沸き起こる。手術前は、これから自分が受ける心臓手術がどういうもので自分の体がどうなるのか分からないから、不安があるのは理解できる。
しかし、手術が終わってからの今日の皆さんが仰った「不安」は、再発のことであったり、薬や不整脈、創のケロイドのことなどなど。純粋に答えが分からないので聞きたい質問はあると思う。だが、質問したとしても「分からない」という答えしか返ってこないことを「既に分かっている」のに、質問することによって「それは分からない」とか「問題ない」という答えを期待通り得ることで不安(?)を解消しようとしている場合も多いのではないかと思った。

グループの代表何人かが、マイクで討論中に出てきた不安についての質問をし、それに答えられる南淵先生。
役に立つかもしれないと思った先生のお答えを一部メモすると、「中性脂肪とLDLコレステロールは100以下に。不整脈の薬はそれぞれ作用が違うが、高血圧の薬はどれも似たようなもの。ケロイドになるのは、寝ている間を含めて無意識に創を自分で触ってしまっていることが原因の一つでは?でも、ケロイドで死んだ人は居ない。珈琲や抹茶、アルコールの摂取は、自分の体が適量を知っている」

そして、南淵先生曰く、「最善のことは既にやったのだから、今、不安を持っても仕方ない」

その通りだと思う。次回はポジティブなテーマの方が盛り上がって良いかもしれませんね。



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最後の一言に尽きますね、やはり。自身にとっての術前の不安は、生きて帰って来ることが出来るのか。術後は再発しないのか。

今、こうして生かされているわけですし、結果オーライ(*^^)v

それと近況ですが、虫歯の治療が3ヶ月渡り、終了。年を越さなくて良かった~(汗)。

No title

緑の旅人さん、

そう、最後の一言に尽きます。

虫歯の治療は、心臓を患った経験があると、歯医者選びも敏感になりますね。
年内に治療を完了できてスッキリというところでしょうか。
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Author: カムバックハート

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カムバックハートこと、鍋島と申します。神奈川県川崎市在住の48歳男性。

2008年12月に僧帽弁形成手術を受けて、第二の人生をスタートさせることができました。

南淵先生と私

南淵先生と私(術後の初外来にて)

フィルムで写真を撮るのが趣味です。(元)心臓病仲間のポートレート写真展の開催に向けて準備中です。詳細はこちらの記事。「創と私」「術前 vs 術後比較ポートレート」「病気を支えた家族と(元)患者のツーショット」「笑顔の(元)心臓病仲間のポートレート」のテーマで作品制作中です。これから心臓手術を受けるかもしれない人達に元気になる期待と勇気を与えたいと思っています。

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ブログ開設: 2008年12月
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南淵明宏先生の公式サイトにある「勇患列伝」 その7に出てくる「平松」とは私のことです。

yomiDr.のサイトにある世相にメス 心臓外科医・南淵明宏ブログ にこのブログのことを書いて頂きました。こちらの記事には第三回(元)心臓病仲間の集まりについて書いて頂きました。

このブログは、私が弁膜症の僧帽弁閉鎖不全症という病気に診断されたところから、入院、手術、退院、その後の生活という流れで時系列に記載しています。2008年12月当時の状況ですので、その後の医学の進歩で内容的に古くなっている部分があるかもしれません。実際の患者にしか分からない心理的な面の記述をできるだけ表現したつもりです。最初から読まれる場合は、「★はじまり ~こちらからご覧下さい~

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